2011-12-01から1ヶ月間の記事一覧

コント:ポール君とグレッグ君(2011年第15弾)

一応拾っておきます。 今年最後のエントリはこの方に締めていただきます。 グレッグ君 ポール君が政府債務の負担について幾つかエントリを書いた。この件に関する僕の見解を幾人かの読者から求められたんだが、それについてはラリー・ボールと書いた以前の論…

リカードの中立命題を巡る紛糾・再燃

今年の3月17日に、リカードの中立命題を巡って欧米ブロゴスフィアで巻き起こった論争を紹介したが、年末を前にして再びその論争が再燃した。 きっかけは、クルーグマンがルーカスの以前の言を取り上げ、リカードの中立命題を誤用している、と批判したことに…

日本の失われた10年は嘘だった

というエーモン・フィングルトン(Eamonn Fingleton)の珍説をケビン・ドラムが紹介している。それによると、80年代のジャパン・バッシングに懲りた日本の政府当局は、以来、GDPを低めに推計しているのだという。それによって欧米は日本の低成長を憐れむように…

2012年の10の課題

10日ほど前に、Calculated Riskが、以下の10項目は来年どう動くのだろうか、という疑問を投げ掛けた*1。 住宅価格 まだどれだけ下がるのか? 住宅投資 2011年は2005年以来初めてGDPにプラスに寄与した。2012年もそこそこ伸びる? 住宅販売 差し押さえの動き…

サックスのゴルバチョフ称賛

HuffingtonPostで、かつてポーランドなどの経済改革の顧問を務めたジェフリー・サックスが、先にプーチンに退任を促したゴルバチョフがその時に東欧の民主化に果たした役割を大いに称賛すると同時に、当時彼への援助を断った米政府を批判している(Economist…

波が風を消す・その247・補足

昨日のエントリに関して、ツイッターで(直接小生宛てではないが)以下のようなコメントを頂いた。 window.twttr = (function(d, s, id) { var js, fjs = d.getElementsByTagName(s)[0], t = window.twttr || {}; if (d.getElementById(id)) return t; js = …

波が風を消す・その247

本ブログで何度か紹介したように(例:このコメントやここやここ)、金融政策は万能なので財政乗数はゼロである、というのがサムナーの従来からの主張である。最近も247回目と銘打ってその主張を繰り返したが、今回はそれにデロングやノアピニオン氏が反応し…

低い法人税は対内投資を促進するのか?

というテーマに関する論文(WP)がこちらのブログで紹介されている(Economist's View経由)。 以下はそのブログにおける該当論文からの引用。 The mantra that governments must remain competitive in the global marketplace by slashing levels of corpo…

好況時に死亡率が上がる理由

がほぼ解き明かされたとして、Robin HansonがこのNBER論文を紹介している(エズラ・クライン・ブログのBrad Plumerエントリ経由)。 以下はHansonの引用から。 We find that most of the additional deaths that occur during times of economic growth are …

日銀の緩和政策は効果的かつ包括的だったのか?

Economist's Viewのサイドバーでたまたま見掛けたIMFのイベントスタディ論文「Bank of Japan’s Monetary Easing Measures: Are They Powerful and Comprehensive?」の結論部より: The BoJ’s easing measures had a statistically significant impact on bon…

好景気は本来ディスインフレ的である

長らくデフレに苦しむ日本とは対照的に、インフレが問題となっているインドであるが、同国の政策当局者の中には、インフレは成長の証と考えている人がいるらしい。それを諌めるような記事がモルガンスタンレーのRuchir SharmaによってThe Economic Timesに書…

ローマ帝国は米国より平等だった

という多少釣り気味のMRエントリをアレックス・タバロックが書いている。元ネタはこのブログ経由のこの論文との由。 それによると、人口がピークに達していた2世紀半ば頃のローマ帝国の人口構成は以下のような感じだったという。 中産階級は人口の6-12% ここ…

欧州中央銀行は緑線を切ったのか?

表題はこのエントリで取り上げたネタを受けたものだが、欧州中央銀行が銀行への流動性供給を拡大したことが、結局裏口を使った国債買い支えになっているのではないか、というSimone Foxmanの12/16付ビジネスインサイダー記事が話題になった。ECBから低金利で…

スティグリッツの構造改革論・続き

昨日紹介したスティグリッツの恐慌論への反応のうち、Roweの批判とそれに対するデロングの擁護論は、専ら理論面に焦点を当てていた。 一方、ライアン・アベントは、そもそも実際のデータがスティグリッツの議論と整合的でないことを指摘した。その後、サムナ…

スティグリッツの構造改革論

スティグリッツがヴァニティ・フェアに書いた大恐慌および大不況に関する記事(H/T Mostly Economics、Economist's View)が波紋を呼んでいる。以下はその抜粋。 ...the inability of the monetary expansion to counteract this current recession should f…

米国は巨大な債務担保証券?

以前、欧州の銀行が米国のシャドウバンキングを支える上で大きな役割を果たしていたということを明らかにしたHyun Song Shin論文を紹介したが、それを元にJayanth R. Varmaが面白い比喩を書いている(Mostly Economics経由)。 Varmaはまず、以下のようにShi…

大不況はなぜ予測できなかったか

というテーマはこれまで繰り返し論じられてきたが、NY連銀ブログでもそうした分析が行われている(Mostly Economics経由)。 分析自体はかなりテクニカルなものだが、コメント欄でのAndolfattoとブログ主Simon Potterとのやり取りが面白かった。 まずはAndol…

トップエコノミストによる2011年を代表するグラフ

をBBCが集めている(デビッド・ベックワース経由のNiklas Blanchard経由のケビン・ドラム経由)。 ドラムは、そのほとんどがユーロ絡みで、かつ、ものすごく興味深いものは無い、と指摘しつつも、その中で以下の1枚をピックアップしている。これは、イングラ…

創造的な人は不誠実?

というタイトルの下に、この論文の内容がハーバードビジネススクールのサイトで紹介されている(Mostly Economics経由;原題は「Are Creative People More Dishonest?」で、論文のタイトルは「The Dark Side of Creativity: Original Thinkers Can be More D…

言語の壁と住宅価格

ダラス連銀から表題のテーマについて興味深い論文が出ている(Mostly Economics経由)。以下はその導入部の簡単なまとめ。 Saez(2007)(WP)は移民の流入が住宅価格を押し上げることを示した。Saezはその理由を、移民は自分たちの住みやすい地域ネットワー…

20号爆弾

ここのネタが少し面白かったので訳してみる*1。 欧州委員会 これは何だ? 爆弾のようだぞ! 欧州中央銀行 爆弾であるはずが無い! 当方の分析官は爆弾であるはずが無いと報告している! データも爆弾では無いことを示している! 明らかに我々の集団幻想の産…

ボーン条件についてもう一度よく考え直してみた。

事務屋稼業さんのツイート経由で、畑農鋭矢氏がドーマー条件とボーン条件についてグラフを用いた分かりやすい解説を書かれたことを知った。 ただ、そのうちのボーン条件の解説は、やや単純に過ぎるように思われる。というのは、畑農氏のグラフでは、ボーン条…

万国の金融業者よ、団結するな

と題したレポートで、ダラス連銀が以下の3つの図を示している(Mostly Economics経由;原題は「Financiers of the World, Disunite」)。これらはいずれもヘッジファンドのパフォーマンスを示した図であるが、最初の図はリーマンショック時にそのパフォーマ…

バーナンキ対ブルームバーグ

11/29エントリで紹介したブルームバーグ記事に(名指しは避けたものの)バーナンキが正面切って反論し、それにさらにブルームバーグが再反論する、ということがあり、Calculated Risk、フェリックス・サーモン、Economixといったところが取り上げている。 FR…

バジョットが現代に生きていたら懲罰的金利を提案しなかった?

David Andolfattoが、バジョットの懲罰的金利(ペナルティレート)のそもそもの意味を問うエントリを書いている。 いわゆるバジョット・ルールに関する記述を「ロンバード街 金融市場の解説 (日経BPクラシックス)」の第7章の概要箇所から引くと以下の通り。…

クリスティーナ・ローマー対ジョン・テイラー

昨日に続きテイラーネタだが、3年前のエントリで、テイラーが「今春(=2008年春)の戻し減税は効果が無かったことを示す図」を提示したことに触れた。 そのテイラーの図を、クリスティーナ・ローマーが先月初めの講演で批判している(H/T Mostly Economics*…

テイラーの名目GDP批判への反論

少し前にテイラーが名目GDP目標を批判し、サムナーが応戦する、ということがあった。それに対し、Uneasy MoneyのDavid Glasnerが、サムナーは善戦したがテイラーに止めを刺すには至らなかった、と評している。その一方で、Glasnerがテイラーへの止めの一撃と…

エコノミストを名乗るならば信頼区間の意味を理解すべし

とリチャード・グリーンが書いている。 それによると、出勤途中の車内でラジオを聞いていたら、エコノミストと称する人物が、11月の雇用の伸びの市場予測が13万人だったのに対し実際には12万人だったので、失望させられる結果だ、と評したとの由。それに対し…

欧州危機と定言命法

昨日のエントリに対しぴっちゃんさんから様々なコメントを頂いたが、その中に「シコルスキは演説の中でイマニュエル・カントの定言命法に言及しましたが、なぜ彼がこれを出してきたのか、ポーランド憲法をお読みになれば理解できると思います」というものが…

ポーランドの英雄か裏切り者か?

昨日紹介したポーランド外相シコルスキの演説に対し、賛否両論の反応が出ているらしい。 否の方では、国内の野党が不信任案や問責決議案を出す動きを見せているとのこと。欧州連邦を提唱する彼の発言は、1989年以前の属国の状態にポーランドを戻そうとするも…