バーナンキ対ブルームバーグ

11/29エントリで紹介したブルームバーグ記事に(名指しは避けたものの)バーナンキが正面切って反論し、それにさらにブルームバーグ再反論する、ということがあり、Calculated Riskフェリックス・サーモンEconomixといったところが取り上げている。


FRB側の主な論点は以下の4つ。

  • FRBの貸出は秘密などでは無かった。
  • 貸出額が7.77兆ドルというのは過大。実際には1.2兆ドルを超えることは無かった。
  • 貸出金利は市場を下回る低金利ではなく、懲罰的な高金利だった。
  • 銀行がFRBの融資で130億ドルの利益を上げたという記述は不正確。


これに対するブルームバーグの反論は概ね以下の通り。

  • 貸出先の個別の情報が伏せられていた。
  • ブルームバーグは7.77兆ドルが実際の貸出額だと書いたことはない。あくまでもFRBが関与した金額として扱っている。11/28記事でも貸出額のピークは1.2兆ドルと書いている。
  • 2008年12月には金利は0.01%まで下がった。
  • 130億ドルの利益についてはFRBの平均貸出額に純利子差益――その費用にはFRBへの支払金利も含まれる――を乗じて計算している。


このブルームバーグの反論に対しサーモンは、以下のようにその問題点を指摘し、FRBの肩を持っている。

  • 7.77兆ドルのくだりは誤解を招く書き方で書かれている*1。ピークが1.2兆ドルと書かれた部分も分かりにくい。
  • 0.01%は特定の銀行への貸出プログラム終了時の大晦日の貸出金利であり、全体を代表するものとは言えない。FRBの貸出金利を市場金利以下と決め付けたディーン・ベーカーのコメントも引用しているが、信用市場が干上がって市場金利が存在しなかった状況に鑑みると、ベーカーの定義も曖昧*2
  • 130億ドルの利益の計算にはFRBの貸出金利そのものがまるで考慮されていない。


ただしサーモンは、このように個別的にはFRBの方に軍配を上げているものの、FRBの反論が名指しを避けたために全体として漠としたものに留まった感が否めず、その意味ではブルームバーグが勝利した、とも書いている。

*1:この点については小生の11/29エントリで紹介したコメントでも皆誤解して受け止めており、それを小生も鵜呑みにしていた。ちなみにジェームズ・ハミルトンもその点を誤解したブルームバーグ批判ブログエントリを書いている。面白いことに、そこでハミルトンが指摘したストックの重複カウントの問題を、ブルームバーグの反論記事ではGAOレポートの16兆ドル(cf. 小生の11/29エントリの脚注)という数字に対して当てはめ、自分たちはより経済的に意味のある数字を構築したのだ、と主張している(なお、同記事によると、GAO自身も期間調整済み貸出額として1.14兆ドルという数字を併せて出しているが[GAOレポートのp.132表9]、16兆ドルという大きな数字の方に皆が飛びついたとの由)。

*2:この点についてベーカーは、FRBの反論を槍玉に挙げたブログ記事で、誰も銀行に借り入れを強制しなかったのだから銀行が鞘を抜ける程度の貸出金利だったに決まっている、と些か説得力に欠ける(と小生には思われる)主張を行っている。