リクスバンク副総裁ヤンソンはまたもや弁解の余地がないものを弁護している

スウェーデン中央銀行(リクスバンク)のペール・ヤンソン副総裁がクルーグマンを勉強不足と批判したブルームバーグ記事が3/15に出た日本語版)が、それに対して、クルーグマンになり代わってスヴェンソンが表題のブログ記事で反論している(原題は「Riksbank Deputy Governor Jansson again tries to defend the indefensible」;H/T クルーグマン)。


リクスバンクは2010年夏から2011年夏に掛けて政策金利を0.25%から2%に引き上げたが、ヤンソンは当時の数字(成長率は約6%、インフレ率は約2%、家計の信用の伸び率は約9%)からすれば、それは通常の行動だった、と述べている。それに対しスヴェンソンは以下の点を指摘している。

  • リアルタイムでは、リクスバンクのインフレ予測はインフレ目標を下回っており、失業率と失業率予測はリクスバンク推計の長期の持続的な失業率を大きく上回っていた。
  • その状況下では利上げではなく利下げが正しい政策であり、利上げには弁解の余地は無い。カロリーナ・エクホルムと自分は理事会で明確かつ論理的な主張でそれに反対した(cf. ここ)。
  • 当時のリクスバンクとFOMCはインフレと失業率について似たような予測を出していた。FRBはその予測に基づき、政策金利を低水準に保ちQE2の準備を開始する、という正しい対応を行った。リクスバンクは間違った対応を行ったが、あるいはヤンソンFRBはリクスバンクに倣うべきだったと言うつもりか?
  • ヤンソンGDPの高成長率を引き締めの理由の一つとして挙げたが、クルーグマンブルームバーグ記事で述べたように、ヤンソンは水準と変化率を混同するという根本的な誤謬を犯している。危機の間にスウェーデンGDPは米国よりも遥かに大きく落ち込んだ。従って、以前のトレンドに戻るためには高成長率が必要だったのであり、それは引き締めの理由にはならない。
  • 引き締めによってスウェーデンGDPは2011年末以降米国のGDPに後れを取るようになった。政策金利を0.25%に維持していたら、米国GDPと同様の推移を辿っていたはず。