CPIとPCEの違い

HicksianさんがRTされたMiles Kimballのツイートで、WSJコラムニストのJo Craven McGintyが書いた3/20付けNUMBERS記事が「The best explanation I have ever seen of why PCE (Personal Consumption Expenditure Price Index) is better than CPI」として紹介されていた。
以下は記事の概要。

  • PCE(personal consumption expenditures price index)はCPI(consumer-price index)に比べると一般には馴染みが薄いかもしれないが、インフレ率の指標としてはより包括的。そのためFRBはPCEの方をインフレ率の指標として好む。
    • PCEがカバーする支出範囲はCPIよりも広い。
    • PCEのウエイトに使われているデータは企業調査に基づいており、CPIのウエイトに使われている消費者調査よりも信頼性が高い。
    • PCEでは短期間に生じる消費者行動の変化を調整する式を用いている。標準のCPIの式ではそうした調整は行われない。
  • 今週FRBが年後半の利上げを視野に入れたことにより、PCEは注目を集めた。PCEは33ヶ月連続でFRBの目標の2%を下回っている。
  • PCIとCPIは、消費者が財とサービスに支出する実際の価格の変化を追うという点では共通しているが、幾つかの重要な点で異なっている。
    • CPIは通常はPCEよりやや高い。
    • CPIは、都市部の消費者が、財とサービスのバスケットに実際にポケットから支出する額を捉えている。PCEは、雇用者や連邦の制度が消費者のために支出する額も含んでいる。
      • その違いが典型的に表れるのは医療費。例えばメディケアでは、政府支出分は一旦は家計への所得移転として扱われ、そこから医療費に回る。CPIではその部分はカウントされない。また民間の保険から支出された場合もCPIではカウントされない。
    • PCEとCPIではデータソースが違うため、比較可能な品目の相対ウエイトが異なる。
      • 米商務省の経済分析局が公表するPCEは、企業調査の小売販売データから導出されている。このデータでは医療関係費のウエイトが最も高くなる傾向にある。
      • CPIは家計調査で報告される消費者購買データから導出されており、シェルターのウエイトが最も高い。
        • また、都会の平均的な消費者の支出が全国の平均と言えるかどうか、という問題のほか、消費者は自分の支出を過小評価するという問題もある。
    • 両者は算式も異なる。
      • CPIは2年ごとに更新される商品のバスケットから導出される固定ウエイトを用いており、その間に発売された新商品や期中の価格変化を織り込めない。そうした新商品や価格変化は、消費者が商品を代替する行動を惹起する可能性がある。
      • PCEは連鎖ウエイト方式を用いることによりその点を織り込んでいる。仮にリンゴが突然高くなれば、消費者の購買数は減るだろう。そのため、ある期と別の期でリンゴのウエイトは変わってくる。連鎖方式では基本的にその平均を取ることになる。
  • とは言え、CPIにもその価値はある。PCEが対象とする個人支出の大半をカバーしており、税率区分の調整に使われるほか、社会保障フードスタンプ、および公務員や退職軍人向けの給付の計算にも使われている。買付契約や雇用契約や貸借契約での価格調整にもCPIが使われる。
  • ただ、消費者の財布ではなく経済全体の変化を見る場合には、やはりPCEの方が適切。