好景気は本来ディスインフレ的である

長らくデフレに苦しむ日本とは対照的に、インフレが問題となっているインドであるが、同国の政策当局者の中には、インフレは成長の証と考えている人がいるらしい。それを諌めるような記事がモルガンスタンレーのRuchir SharmaによってThe Economic Timesに書かれているMostly Economics経由)。


Sharmaはまず、過去10年間の中国のインフレ率が、高成長にも関わらず、平均2%だったことを指摘している。そして、それが例外的なことではなく、1960年代、70年代、00年代において7%を超える高成長を遂げた新興国に共通した特徴であることを指摘している。


またそれらの国に共通するのは、投資の対GDP比率が平均して3割と高いことだという。ただし、インドも同比率が高まったということで安心している人がいるが、投資の中身も問題となる、とSharmaは警告する。ソ連の投資の対GDP比率は高かったが、成長にはつながらなかった。適切な投資を続けていればインフレを吸収して成長を持続できるが、インドのインフレは投資がうまくいっていないことの現われではないか、とSharmaは懸念を示す。


Sharmaはこの点でも、中国を貯蓄と投資の両輪がうまく回っている成功例として挙げて、インドと比較対照している。だが、最近は中国もインフレや過剰投資が問題になっていることを考えると(cf. ここ)、それは少し理想化し過ぎではないか、という気もする。とは言え、インドにとっての問題点を指摘する際に中国を引き合いに出す、というのが、彼の国の言論の一つの形になっていることが伺えるのが興味深い。