投資と潜在GDP

デロングとオーストリア学派ロバート・マーフィー*1が喧嘩している。



議論の内容は単純で、上図を示しつつデロングが、潜在GDPの成長経路が2007年当時に考えられていたよりも大きく低下したという兆候は、投資の水準などにおいて現われていない、と書いたのに対し、マーフィーが、民間国内投資の対潜在GDP比率は大きく下がったではないか、と下図を示して噛み付いた


これに対しデロングは、次の点を指摘して反論した

  • 経済の趨勢的成長率が著しく低下した時には、資本の耐用年数が延長されるために企業の設備投資が落ち込むはずだが、そうなっていない。
  • 住宅投資の落ち込みは金融要因で説明でき、その原因を将来の潜在成長率の低下に帰する説得力のある議論は展開できない。
  • 資本の実質リターンが5%とすると、2008年以降の投資の落ち込みが潜在GDPに与える影響は、
      (投資シェアの低下19%-14%)×4年×資本の年率リターン5%
     =1%の潜在GDP低下
    に過ぎない。


最初の2点に関連して、デロングは以下の図を提示している。


またデロングは、マーフィーは潜在GDPのことを分かっちゃいねえ、とも書いたが、それにクルーグマン加勢しCBOの潜在GDP推計は生産関数方式を用いているので、資本ストックが以前の予想より縮小したことは織り込み済みで、実際、危機後に将来の潜在GDP推計値は低下してきた、と指摘している。

*1:本ブログのエントリでは以前ここここここで言及したことがある。