11日エントリでは、トランプ減税の恩恵のかなりの部分が海外投資家に流出してしまう、というクルーグマンの試算を紹介した。その試算はTax Foundationの減税効果の推計に基づいていたが、Tax Policy Centerがより現実的な推計を出したため、クルーグマンは改めてそれに基づく試算を提示している。以下はその概要。
- Tax Policy Centerによれば、2027年のGDPはベースラインより0.3%高まるに過ぎない。従って成長による歳入増が財政赤字を改善する効果は僅か。
- 両院合同租税委員会(Joint Committee on Taxation)によれば、2027年の歳入損失は1710憶ドル。コンセンサスに従ってその1/3が労働者、2/3が資本に帰属するとし、さらにTax Policy CenterのSteven M. Rosenthalの指摘に基づき資本帰属分の35%が海外投資家に帰属するとすれば、400億ドルが海外の投資所得が増加する分となる。
- 貿易赤字の効果についてはTax Policy Centerは数字を出していないが、他のモデルの推計によると概ね年800憶ドル増加する。従って10年で対外純債務は8000憶ドル増加する。経済分析局によれば海外投資家の米国での投資収益率は約2%で、米国の海外投資収益率は約3%である。焦点となる直接投資の収益率はもっと高いと思われるが、取りあえず平均を取って2.5%を適用すると、200憶ドルが追加的に投資所得として海外に支払われることになる。
- 即ち、2027年には600億ドルだけGNIがGDPに比べ減少することになる。その時の潜在GDPは約28兆ドルとされているので、それはGDPの0.2%強に相当する。Tax Policy Centerの推計したGDPの効果は0.3%なので、その大半が海外に流出してしまうことになる。