医療

米国におけるコロナ後遺症

というNBER論文が上がっている。原題は「Long Covid in the United States」で、著者はDavid G. Blanchflower(ダートマス大)、Alex Bryson(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)。 以下はその要旨。 Although yet to be clearly identified as a clinica…

人工知能が医療支出にもたらす潜在的影響

というNBER論文が上がっている。原題は「The Potential Impact of Artificial Intelligence on Healthcare Spending」で、著者はNikhil Sahni(マッキンゼー・アンド・カンパニー)、George Stein(同)、Rodney Zemmel(同)、David M. Cutler(ハーバード…

民営化の影響:病院部門の実証結果

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「The Impact of Privatization: Evidence from the Hospital Sector」で、著者はMark Duggan(スタンフォード大)、Atul Gupta(ペンシルベニア大)、Emilie Jackson(ミシガン州立大)、Zachary S. Temp…

不確実性下での疫病対策・再論

前回エントリでは、コロナ禍による健康被害を疫学者が過小推計したとされる米国を、過大推計したとされる日本と対照させてみた。一方、こちらの2020年6月エントリで紹介したNBER論文では、過小推計した場合と過大推計した場合の推移を、不確実性を組み込んだ…

コロナ禍による死者数を過小推計した疫学者たち

12/31エントリで触れた経済学者から疫学者への批判の一つには、コロナ禍による死者数を過大に見積もっている、というものがあった。これは一般の人々からも特に西浦博士の推計に対し批判が寄せられる点である。一方、米国では、NYTのDavid Wallace-Wellsが最…

医療費支出の伸びの低下:カーブの撓みは続くか?

というNBER論文が上がっている(H/T タイラー・コーエン)。原題は「Health Care Spending Growth Has Slowed: Will the Bend in the Curve Continue?」で、著者はSheila D. Smith(メディケア・メディケイド・サービスセンター(Centers for Medicare & Med…

経済学者と疫学者の暗闘

こちらで関連ツイートをブクマしたように、疫学者と経済学者のコロナ対策に関する考え方の違いが大きくなっているようである。簡単に言うと、経済学者が政策介入の無い経済活動を重視し、オミクロン株のインフルエンザ並みの軽症化に鑑みてコロナへの特措法…

欧米の2022年の超過死亡は何で説明できるか?

超過死亡率の高さとその原因に関する議論が最近日本で話題になったが、海外の状況はどうなのかとぐぐってみたところ、Health Feedbackという組織*1の11/2付け(11/28更新)の表題の記事に行き当たった。原題は「What can explain the excess mortality in th…

コロナワクチンの事前のモラルハザード効果

というNBER論文が上がっている。原題は「The Ex-Ante Moral Hazard Effects of COVID-19 Vaccines」で、著者はVirat Agrawal(南カリフォルニア大)、Neeraj Sood(同)、Christopher M. Whaley(ランド研究所)。 以下はその要旨。 A long-standing economi…

長期的社会的距離

というNBER論文が上がっている(H/T タイラー・コーエン)。原題は「Long Social Distancing」で、著者はJose Maria Barrero(メキシコ自治工科大学)、Nicholas Bloom(スタンフォード大)、Steven J. Davis(シカゴ大)。 以下はその結論部。 More than te…

ワクチンの直接的な効果と間接的な効果:学校におけるコロナからの実証結果

というNBER論文が上がっている。原題は「Direct and Indirect Effects of Vaccines: Evidence from COVID-19 in Schools」で、著者はSeth M. Freedman(インディアナ大)、Daniel W. Sacks(ウィスコンシン大学マディソン校)、Kosali I. Simon(インディア…

コロナ禍における共和党員と民主党員の超過死亡率

というNBER論文が上がっている。原題は「Excess Death Rates for Republicans and Democrats During the COVID-19 Pandemic」で、著者はイェール大のJacob Wallace、Paul Goldsmith-Pinkham、Jason L. Schwartz。 以下はその要旨。 Political affiliation ha…

回答者の一対評価を用いた様々な社会的距離行動の相対的コロナリスクに対する認識の推計

というNBER論文が上がっている。原題は「Estimating Perceptions of the Relative COVID Risk of Different Social-Distancing Behaviors from Respondents' Pairwise Assessments」で、著者はOri Heffetz(コーネル大)、Matthew Rabin(ハーバード大)。 …

コロナ疾患が労働者に与える影響

というNBER論文が上がっている。原題は「The Impacts of Covid-19 Illnesses on Workers」で、著者はGopi Shah Goda(スタンフォード大)、Evan J. Soltas(MIT)。この論文は既にWSJ日本版や日経で紹介されているほか、タイラー・コーエン経由で要旨も邦訳…

それを作れば、彼らはワクチン接種を受けるのか? コロナワクチンの接種会場がワクチン接種率と公衆衛生に与えた影響

というNBER論文が上がっている。原題は「If You Build it, Will They Vaccinate? The Impact of COVID-19 Vaccine Sites on Vaccination Rates and Outcomes」で*1、著者はJohn Brownstein(ハーバード大)、Jonathan H. Cantor(ランド研究所)、Benjamin R…

AEAのコロナ対策は過剰か? 補足

前回エントリで取り上げたタイラー・コーエンとJoshua Gansの論争について、Gansが連ツイで解説していた。 Why do @tylercowen (https://marginalrevolution.com/marginalrevolution/2022/09/a-further-saturday-link.html) and I (https://joshuagans.subst…

AEAのコロナ対策は過剰か?

という点を巡ってタイラー・コーエンとJoshua Gansが論争を繰り広げている。きっかけは、来年初に開催されるAEA(米国経済学会)大会について、参加者のワクチンおよびブースター接種と、屋内コンファレンスでのKN-95以上の高品質のマスク着用の通達が出され…

米雇用者のコロナワクチン義務化の便益と費用

8/10エントリで紹介したのと同様にワクチン接種の効果を調べた表題のNBER論文が上がっている。原題は「The Benefits and Costs of U.S. Employer COVID-19 Vaccine Mandates」で、著者はMaddalena Ferranna、Lisa A. Robinson、Daniel Cadarette、Michael Eb…

ワクチン義務化が感染拡大に与える影響:カレッジのコロナワクチン義務化の実証結果

というNBER論文が上がっている。原題は「The Effect of Vaccine Mandates on Disease Spread: Evidence from College COVID-19 Mandates」で、著者はRiley K. Acton(マイアミ大)、Wenjia Cao(ミシガン州立大)、Emily E. Cook(テュレーン大)、Scott A. …

コロナワクチンはどれだけ過小評価されているのか? 離散選択実験とVSLベンチマークからの証拠

というNBER論文が上がっている。原題は「How Undervalued is the Covid-19 Vaccine? Evidence from Discrete Choice Experiments and VSL Benchmarks」で、著者はPatrick Carlin(インディアナ大)、Brian E. Dixon(レーゲンストリーフ研究所*1)、Kosali I…

2020-21年のコロナ以外の超過死亡:政策選択の付随的被害か?

というNBER論文をケイシー・マリガンらが上げている。原題は「Non-Covid Excess Deaths, 2020-21: Collateral Damage of Policy Choices?」で、著者はCasey B. Mulligan(シカゴ大)、Robert D. Arnott(Research Affiliates LLC*1)。 以下はその要旨。 Fro…

ドナルド・トランプのコロナワクチン支持を用いた公衆衛生へのカンフル剤:大規模広告実験

というNBER論文が上がっている。原題は「Using Donald Trump’s COVID-19 Vaccine Endorsement to Give Public Health a Shot in the Arm: A Large-Scale Ad Experiment」で、著者はBradley Larsen(スタンフォード大)、Marc J. Hetherington(ノースカロラ…

ペルツマン再訪:21世紀におけるFDA規制の機会費用の定量化

保守派の経済学者としてクルーグマンなどのリベラル派の経済学者と幾たびか角突き合わせてきたケイシー・マリガン(Casey B. Mulligan、シカゴ大)が、表題のNBER論文を上げている。原題は「Peltzman Revisited: Quantifying 21st Century Opportunity Costs…

医療提供者が償還率の変化に反応しない時(とその理由)

というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクのある著者の一人のサイト)。原題は「When (and Why) Providers Do Not Respond to Changes in Reimbursement Rates」で、著者はMarcus Dillender(イリノイ大学シカゴ校)、Lu G. Jinks(アナリシスグル…

米国のコロナ禍の最初の年における超過死亡数

というNBER論文が上がっている。原題は「Excess Deaths in the United States During the First Year of COVID-19」で、著者はバージニア大のChristopher J. Ruhm。以下はその要旨。 Accurately determining the number of excess deaths caused by the COVI…

バングラデシュのマスク研究から何を結論すべきか?・再訪

以前、バングラデシュでのマスク着用に関するRCTについて、Ben Rechtによる批判的な検証を取り上げたことがあった。その後、研究者がデータを公開したとのことで、Rechtが公開自体は賞賛しつつも改めてそのデータを批判的に検証している(H/T タイラー・コー…

実効再生産数に波が生じる理由

Philippe Lemoineというコーネルの博士課程にいる研究者が、自らが所属するThe Center for the Study of Partisanship and Ideology(CSPI)という組織のブログに「Have we been thinking about the pandemic wrong? The effect of population structure on …

イベルメクチン問題が教えてくれること

Scott Alexanderという有名ブロガー(cf. Slate Star Codex - Wikipedia)によるイベルメクチンのCovid-19への効果のメタ分析をタイラー・コーエンが推奨している。日本語記事では既にgigazineがその概要を紹介している。 そのブログでアレキサンダーは、イ…

実効再生産数なんてもう要らない

「先進的な時系列モデルは疫学者の「R」を超えるのか?( Do advanced time series models outperform the epidemiologists “R”?)」というコメントを添えてタイラー・コーエンが「Rよさらば:疫病を追跡し予測する時系列モデル(A farewell to R: time-seri…

SIRモデルでの実効再生産数の極限は?

以下のツイートを目にして、実際の測定値はともかく、感染モデル上は感染が収まった時に実効再生産数はどうなるのか、という疑問を抱いた。皆さん大事なことなので誤解の内容にお願いします。この数字は感染者数が下がりきると必ず1になります。 https://t.c…