という主旨の論文をUCLAの政治学者Daniel Treismanが書き、WaPoのMonkey Cageで内容を紹介している。
以下は論文の要旨。
While some believe that economic development prompts democratization, others contend that both result from distant historical causes. Using the most comprehensive estimates of national income available, I show that development is associated with more democratic government—but mostly in the medium run (10 to 20 years). This is because higher income tends to induce breakthroughs to more democratic politics only after an incumbent dictator leaves office. And in the short run, faster economic growth increases the ruler's survival odds. Leader turnover appears to matter because of selection: In authoritarian states, reformist leaders tend to either democratize or lose power relatively quickly, so long-serving leaders are rarely reformers. Autocrats also become less activist after their first year in office. This logic helps explain why dictators, concerned only to prolong their rule, often inadvertently prepare their countries for jumps to democracy after they leave the scene.
(拙訳)
経済発展が民主化を促すと言う者もいるが、両者はまったく別々の歴史的要因の帰結である、と言う者もいる。本稿では、利用可能な国民所得の最も包括的な推計を用い、発展がより民主的な政府と結び付いていることを示す――ただし、概ね中期(10〜20年)においてであるが。そうなる理由は、所得の向上がより民主的な政治への突破をもたらすのは、現職の独裁者がその地位を去った後になってから、という場合が多いからである。しかも短期的には、より急速な経済成長は統治者が生き残る可能性を上昇させる。指導者の交代が問題となるのは、選択効果のためである。全体主義国家では、改革派の指導者は民主化するか比較的早く権力を失ってしまうため、長く地位を維持する指導者が改革者であることは滅多に無い。独裁者はまた、権力の座に就いた最初の年より後は積極性を失う。自らの統治の長期化にのみ関心を払う独裁者が、しばしば意図せずして自分が去った後に自国が民主主義に飛躍する準備を整える理由は、この論理によって説明できる。
Wapo記事でそのパターンの典型として挙げられているのが、フランコ総統死去後のスペインである(下図参照)。
また、論文/記事では、就任最初の年のPolity2スコアが6未満で、任期中に一人当たりGDPが6000ドルを超え、2004年までにその地位を去った21人の独裁者のリストを示している。そのリストの平均では、任期中のPolity2スコア変化が-0.7とマイナスであったのに対し、地位を去った後の10年間のスコア変化は+8.1となっている。
一方、このパターンに従わなかった代表例としてWapo記事では、リー・クアンユーからゴー・チョクトンに1990年に政権交代が行われたシンガポールを挙げている。プーチンのロシアと習近平の中国については、今後を御覧じろ、とのことである。