ノーベル経済学賞を一昨年に受賞したハーバード大のクラウディア・ゴールディン(Claudia Goldin)が表題のNBER論文(原題は「Babies and the Macroeconomy」)を上げている。以下はその要旨。
Fertility levels have greatly decreased in virtually every nation in the world, but the timing of the decline has differed even among developed countries. In Europe, Asia, and North America, total fertility rates of some nations dipped below the magic replacement figure of 2.1 as early as the 1970s. But in other nations, fertility rates remained substantial until the 1990s but plummeted subsequently. This paper addresses why some countries in Europe and Asia with moderate fertility levels in 1980s, have become the “lowest-low” nations today (total fertility rates of less than 1.3), whereas those that decreased earlier have not. Also addressed is why the crossover point for the two groups of nations was around the 1980s and 1990s. An important factor that distinguishes the two groups is their economic growth in the 1960s and 1970s. Countries with “lowest low” fertility rates today experienced rapid growth in GNP per capita after a long period of stagnation or decline. They were catapulted into modernity, but the beliefs, values, and traditions of their citizens changed more slowly. Thus, swift economic change may lead to both generational and gendered conflicts that result in a rapid decrease in the total fertility rate.
(拙訳)
出生率は世界のほとんどすべての国で大きく低下したが、低下のタイミングは先進国の間でさえ違っていた。欧州、アジア、北米で、一部の国の合計特殊出生率は早くも1970年代に魔法の人口置換水準の数字である2.1を下回った。しかし別の国では、出生率は1990年代まで相当程度の水準を維持したものの、その後に急落した。本稿は、なぜ1980年代の出生率がそこそこの水準だった欧州とアジアの一部の国が今日「最低水準」(出生率が1.3以下)の国になった一方で、早くに低下した国がそうならなかったのか、という問題に取り組む。また、両グループの交差するポイントがなぜ1980年代と1990年代だったのか、という問題にも取り組む。2つのグループを区別する重要な要因は1960年代と1970年代の経済成長である。今日の出生率が「最低水準」の国は、長期間の停滞ないし低下の後に一人当たりGNPの急速の伸びを経験している。それらの国は急速に現代化したが、国民の考え、価値観、および伝統の変化はよりゆっくりとしたものだった。従って、急速な経済の変化は世代間と男女間の双方において軋轢をもたらし、それが合計特殊出生率の急低下を招いた。
ungated版は見当たらなかったが、昨年9月19-20日に開催された第9回ECB年次研究コンファレンスでのジャン・モネ講演(Jean Monnet Lecture)のスライドがECBのサイトに上がっている。
以下はグループ1と定義された国の出生率の推移。
以下はグループ2と定義された国の出生率の推移。
以下はグループ1と定義された国の一人当たりGDP成長率の推移。
以下はグループ2と定義された国の一人当たりGDP成長率の推移。
スライドでは出生率と経済成長が対照的な推移を示した国として、韓国とイタリアをピックアップしている。
また、そのような経緯を辿らなかった国として、フランスとスウェーデンをピックアップしている。
以下は出生率と家事育児の男女格差の指標との関係を示したグラフ。