収斂しなくなった生産性

Tim Taylorが、BOEのチーフエコノミストのアンドリュー・ホールデン(Andrew Haldane)が20日LSEで行った生産性に関する講演紹介している。それによると、ホールデンは世界的な生産性成長率の傾向について以下の3点を指摘している。

  1. 生産性成長の鈍化は英国に限った話ではなく、世界的な現象
    • 1950年から1970年の世界的な生産性成長率の中位値は平均して年率1.9%だった。1980年以降は0.3%である。
  2. この生産性成長率の鈍化は明らかに近年の現象ではない
    • 多くの先進国で1970年代に始まった現象とみられ、世界的な金融危機の産物ではない。
      • ただし金融危機は既存の傾向を増幅させたように思われる。
  3. 生産性成長の鈍化は先進国と新興国の双方で生じた
    • 先進国、新興国を問わず、1970年代以降の生産性成長率の低下は1.75%ポイント程度。

ホールデンは、その1.75%ポイントの低下は、フロンティアたる米国のイノベーションの鈍化よりは、フロンティアから非フロンティアへのイノベーションの普及が鈍化した影響が大きい、と指摘している。その理由の一つは、米国のGDPは世界の2割に過ぎないからである。また、米国を基準に取って44か国の生産性水準の分布グラフを描くと、1950年代から1970年代に掛けては収束の動きがみられたが、その後また引き離され、現在は1950年代と同程度の乖離に戻ってしまったという。
ホールデンはこの傾向について以下のように指摘している。

Taken at face value, these patterns are both striking and puzzling. Not only do they sit oddly with Classical growth theory. They are also at odds with the evidence of history, which has been that rates of technological diffusion have been rising rather than falling over time, and with secular trends in international flows of factors of production. At the very time we would have expected it to be firing on all cylinders, the technological diffusion engine globally has been misfiring. This adds to the productivity puzzle.
(拙訳)
額面通りに受け止めると、こうしたパターンは驚くべきであると同時に困惑させられるものである。古典派成長理論と合わないだけでなく、技術の普及速度は時間とともに低下ではなく上昇してきたという歴史的な証拠とも合わないほか、生産要素の国際的な流出入の長期的傾向とも合わない。エンジン全開になるはずというまさにその時期に、技術普及のエンジンは世界的なエンストを起こしてしまった。これは生産性パズルに付け加わる話である。