Glaeserの経済学って適当すぎねえ?

経済学者のEdward Glaeserの論考については都市に関するものを中心として本ブログでも何回か取り上げてきたが(例:ここここここ)、その主張の妥当性を疑問視するブログエントリが昨年末のEconomist's Viewでリンクされていた。


該当ブログは「West Coast Stat Views (on Observational Epidemiology and more) 」という名前のMarkとJosephの2人の共有ブログである。トップ画面のタイトルに添えられた注釈によると、ブログ主の2人は西海岸在住で、応用統計学、高等教育、疫学がブログのテーマだという。Josephは新任の准教授、Markは元数学教師のマーケティング関係の統計学者との由。


Economist's Viewがリンクした12/29エントリを書いたのはMarkだが、このブログではそれまでにもGlaeserの主張の問題点を指摘したエントリを上げていたようで、今回のエントリはいわばそれらのまとめエントリになっている。そこで挙げられたGlaeser批判*1を箇条書きに書き出してみると以下のようになる。

●[http
//observationalepidemiology.blogspot.jp/2012/12/disability-and-work.html:title=Josephの2012/12/28エントリ]:2012/12/27ブルームバーグ論説でGlaeserは、障害補償給付の増加を訝しみ、彼らが仕事に復帰するように動機付けるべきだ、と論じたが、そうした障害を持つ失業者の直面する状況を分かっていない*2
●[http
//observationalepidemiology.blogspot.jp/2012/12/glaeser-glaeser-where-have-i-heard-that.html:title=Markの2012/12/29エントリ](Economist's Viewがリンクしたエントリ):2011/3/8Economixブログ記事でGlaeserは、デトロイトと違ってシアトルはワシントン大学から教育面での恩恵を受けた、と書いたが、デトロイトの近くにもミシガン大学やウェイン州立大学がある。
●同じく[http
//observationalepidemiology.blogspot.jp/2012/12/glaeser-glaeser-where-have-i-heard-that.html:title=Markの2012/12/29エントリ]および後続の12/30エントリ:2010/12/28Economixブログ記事でGlaeserは、テキサス州ハリス郡の方がニューヨーク州ウェストチェスター郡より人口密度が高いと書いたが、ハリス郡はヒューストンを含んでいるのに対し、ウェストチェスター郡はニューヨークを含んでいるわけではない*3共和党州では建築規制が緩いために高品質の住宅が安く供給される、という主張の一環として彼はそうした問題含みの比較を行ったようだが、(前項や次項と同様に)確証バイアスに陥っている。
●[http
//observationalepidemiology.blogspot.com/2011/01/when-relative-rates-are-misleading.html:title=Josephの2011/1/14エントリ]およびMarkの2011/1/31エントリ:2011/1/11Economixブログ記事でGlaeserは、元の所得水準を無視して伸び率で州同士の経済パフォーマンス比較を行ったほか、人口密度で説明が付く人口移動のパターンに無理に自説を当てはめている。
●[http
//observationalepidemiology.blogspot.jp/2011/01/while-were-doing-then-and-now.html:title=Markの2011/1/7エントリ]:2009/6/5ボストングローブ記事*4でGlaeserはGM再生プランへの疑義を表明したが、結果は成功に終わった。
●[http
//observationalepidemiology.blogspot.jp/2012/03/food-stamps.html:title=Josephの2012/3/8エントリ]:2012/2/28ブルームバーグ論説でGlaeserは、フードスタンプが子供の肥満に結び付くという論理の飛躍を行っている。
●Metaphor hackerブログでのDominik Lukešの[http
//metaphorhacker.net/2011/02/the-most-ridiculous-metaphor-of-education/:title=2011/2/20エントリ]:2011/2/18FreakonomicポッドキャストでGlaeserは、レストランの自由競争と学校制度の硬直性を比較したが、教育の質は食事の質ほど単純ではないことや、学校制度に競争原理を持ち込むコストがレストランにおけるよりも非常に大きいことを無視している。
●[http
//observationalepidemiology.blogspot.jp/2011/03/more-glaeserian-causality.html:title=Markの2011/3/16エントリ]:2011/3/15Economixブログ記事でGlaeserは、高速鉄道などのインフラプロジェクトがスペインの財政的苦境をもたらしたと書いたが、クルーグマン2010/2/5ブログ記事で示したように、危機前のスペインは財政面で優等生だった。

*1:ただし他のブログでの指摘も一つ含まれている。

*2:Josephはデロング経由でDuncan Black (Atrios)の批判も援用している。

*3:Glaeserの該当記事は本ブログでもここで紹介している。

*4:元エントリではそれを引用したEconomist's Viewにリンクしている。