なぜニューヨークは米国最大の都市なのか?

と題した論文を2005年12月のNY連銀のEconomic Policy ReviewにEdward Glaeserが書いているMostly Economics経由;原題は「Urban Colossus: Why Is New York America’s Largest City?」)。


その結論部では、200年間も全米第一の都市であり続けたニューヨークの経済史から、4つの教訓を引き出している。

  1. 地理的決定論
    • ニューヨークについては、最大の港湾を持っていたことが発展を運命付けた。その点では地理的決定論にも一理ある。
  2. 輸送コストの重要性
    • ニューヨークの港湾都市としての発展には輸送コストの問題が寄与した。移民受け入れの中心地および製糖業の中心地となったことについても同様。
  3. 地域特化の経済
    • 輸送コストの低下によってそれに基づく集積効果が衰えた後も、関連産業同士が近くに位置することの有利さに基づく集積効果が働いた。
  4. 情報の重要性
    • 出版業がニューヨークに集まったのは、そこで英国から輸入される最新の本をいち早く読むことができたからであった。製糖業や衣料品業が一次製品の製造場所ではなくニューヨークに集まったのも、情報の入手に関する有利さのためという側面があった。金融業は、いち早く最新のニュースを入手できるというニューヨークの恩恵を200年に亘り受け続けた。


また、論文では、20世紀半ばの技術革新のために全米の大都市が没落した後もニューヨークが発展し続けた理由として、金融業や企業向けサービスといった産業に優位性を持っていたことを挙げている。それらの産業では依然として人同士が顔を合わせることが重要であり、そうした産業に特化することにより輸送コストの低下による集積効果の減衰の影響を免れた、とのことである。そういった優位性も今後のIT技術の発展により失われていく可能性があるが、現在のところはIT技術はむしろ対面の重要性を強める方向に働いている、とGlaeserは述べている。


なお、Mostly Economicsの別エントリで紹介されているが、GlaeserはCity Journalという雑誌の最新号にやはりニューヨークについての長文の記事を書いている。そこでは彼は、起業家たちがニューヨークの発展に果たしてきた役割に焦点を当て、ニューヨークの将来は今後もそういった起業家たちを惹き付けられるかどうかに懸かっている、と述べている。