Mario Polèseという都市経済学者*1が書いたCity Journal記事で解説されている表題の原則をMostly Economicsが紹介している。その五原則とは以下の通り。
- 都市の大きさと場所は繁栄の主要な決定要因である。
- それによって決定された都市の序列は時を経てもあまり変わらない。
- 都市の成長経路に大きな変動が生じる時、その原因は外部の出来事もしくは技術の変化であることがほとんどである。
- アクセスが便利で他地域との接続の良い都市は成長率が高い。
- あらゆる産業は都市にその影響を刻みつける。それは必ずしも良いものとは限らない。
- 都市の盛衰のメカニズムについては未解明な部分が多いものの、良きにつけ悪しきにつけ政策は重要。
- ニューオリンズの凋落はハリケーン・カトリーナによってもたらされたわけではなく、腐敗や縁故主義や狭量な政策によってその遥か以前に始まっていた。教育への投資を怠ったルイジアナや、統治に問題を抱えたフランスのマルセイユも同様。逆に、ミネアポリスのセントポールは地理的に不利な環境を跳ね返して成功した。
- カナダ政府によるモントリオール・ミラベル国際空港の開港も失敗例。新空港は国際線、従来のドルバル空港は北米路線という住み分けを意図したが*2、それによってカナダにおけるハブ空港の機能がモントリオールからトロントに移ってしまった(∵ロンドンからクリーブランドに飛ぶのにミラベルからドルバルへ車を乗り継ぎたいと思う人はいない)。のみならず、それと軌を一にして金融機関や企業の本社も陸続とトロントに移転した。ミラベルは今は閉鎖されドルバル空港に路線は統合されたが、損失がもたらされたことには変わりない。
- 一発逆転を狙う政策がうまくいくこともまずない。モントリオールは1976年のオリンピック開催で経済テコ入れを図ったが、スタジアム建設で市の財政が破綻寸前になった一方、長期的成長への効果は無かった。
またPolèseは、この五原則を提示する前に、都市を論ずるに当たって留意すべき点として以下の3点を挙げている。
- 都市は経済や政治の単位ではなく、人々が集まる場所である。従って、例えばニューヨークを分析する場合は、ニューヨーク市ではなくニューヨークの都市圏を分析対象とすることになる。その際、都市圏の境界が時代と共に変化することに注意。それを忘れてしまうと、ニューヨークが1960年の1200万人から今日の2000万人まで人口が増加したという話から誤った結論を導き出すことになる。
- 都市が国や州のような経済や政治の単位ではないということは、人的資源に関して激しい競争に曝されていることを意味する。国や州を移るのに比べ、都市を移るのは容易。
この第2点の好例としてPolèseは、自らの居住するモントリオールにおける前述のミラベル国際空港の一件を挙げている。