金融面の高度な知識と銀行の市場支配力

というNBER論文が上がっている。原題は「Financial Sophistication and Bank Market Power」で、著者はMatthias Fleckenstein(デラウェア大)、Francis A. Longstaff(UCLA)。
以下はその要旨。

We study the relation between bank funding costs and the financial sophistication of bank customers. In doing this, we make use of a natural experiment that allows us to identify banks that—either intentionally or unintentionally—price time deposits in a way that can result in financially-unsophisticated customers essentially being shortchanged. We find that these banks have significantly lower deposit funding costs. These results provide evidence that having financially-unsophisticated customers may provide banks with substantial market power and be an important component of the value of a bank's deposit franchise.
(拙訳)
我々は、銀行の資金調達コストと、銀行の顧客が持つ金融に関する高度な知識との関係を調べた。その際に我々は、金融に関し高度な知識を持たない顧客が事実上騙される結果になるような形で定期預金の価格付けを――意図的にせよ、そうでないにせよ――行っている銀行を識別することを可能にした自然実験を利用した。我々は、そうした銀行の預金調達コストが有意に低いことを見い出した。この結果は、金融に関する高度な知識を持たない顧客を有することが銀行に相当な市場支配力を提供し、銀行の預金フランチャイズ価値の重要な要素となっている可能性を示す証拠を提供している。

銀行預金金利に満期変換リスクは織り込まれているのか? - himaginary’s diaryで紹介した論文でも同じ著者たちが預金のフランチャイズ価値と銀行の市場支配力について調べていたが、そちらが満期変換リスクに起因する預金者のコストに関する研究だったのに対し、今回の論文は銀行が金融に疎い預金者を騙しているという穏やかならぬ内容になっている。