極端な通常としての日本

ジェームズ・ハミルトンが政府債務を巡ってクルーグマンらと論争を繰り広げている。


論争の焦点になっているのは、ハミルトンがミシュキンらとの共著論文*1で示した以下の回帰式である*2
  


この式を基にハミルトンは、政府債務の対GDP比率が高くなると金利が上昇し、やがて下図のように手に負えなくなる、と警告した。


それに対するクルーグマン(+ここ)、The AtlanticのMatthew O'BrienデロングTim Duyの反論は、概ね以下の2点に集約される:

  • 日本を単なる特別ケースとして扱って良いのか? (上の回帰式ではαiは国ごとの固定効果を扱っており、日本は非常に大きなマイナスの値となっている)
  • 自国通貨を持たないユーロ圏の国がサンプルの多くを占めるとはこれ如何に?


クルーグマンは論文のデータを用いた以下の散布図を示して、そうした論点を視覚的に表わしている。


またTim Duyは、日本を以下のように表現している。

Time and time again, Japan sticks out like a sore thumb that those preaching the unsustainability of government debt want to sweep under the rug with the "Japan is a special case" story (a country fixed effect). But it seems more likely that Japan's economy is behaving exactly as you might expect given that it issues debt in its own currency. In other words, Japan is just a normal case pushed to the extreme.
(拙訳)
日本はいつでも目立ってしまうので、政府債務の持続不可能性を説く者は、「日本は特別ケース」という話(国ごとの固定効果)と共に日本を絨毯の下に掃き入れようとする。しかし、債務を自国通貨建てで発行していることに鑑みると、日本はまさに予想通りに推移している可能性の方が高い。換言すれば、日本は極端にまで進んだ通常ケースに過ぎない。


これに対するEconBrowserエントリ*3でのハミルトンの反論は、概ね、

というものになっている。

*1:ハミルトンのEconBrowserエントリから論文タイトルと共著者名をそのまま引用すると、「Crunch Time: Fiscal Crises and the Role of Monetary Policy, co-authored with David Greenlaw David Greenlaw (Managing Director and Chief U.S. Fixed Income Economist for Morgan Stanley), Peter Hooper (Managing Director and Chief Economist for Deutsche Bank Securities Inc.), and Frederic Mishkin (professor at Columbia University and former governor of the Federal Reserve)」。

*2:[2014/3/15]http://www.econbrowser.com/archives/2013/03/mpf_eq3.gifのリンク切れに伴いリンク先を変更。

*3:これ以前の同研究紹介エントリはこちらこちら