ブルームらの不確実性論文をもう一丁。こちらのエントリで紹介した論文で言及していたBaker=Bloom=Terry(2020)が表題のNBER論文としてアップされたので、その要旨を紹介しておく。論文の原題は「Using Disasters to Estimate the Impact of Uncertainty」で、著者はScott R. Baker(ノースウエスタン大)、Nicholas Bloom(スタンフォード大)、Stephen J. Terry(ボストン大)。
Uncertainty rises in recessions and falls in booms. But what is the causal relationship? We construct cross-country panel data on stock market levels and volatility and use natural disasters, terrorist attacks, and political shocks as instruments in regressions and VAR estimations. We find that increased volatility robustly lowers growth. We also structurally estimate a heterogeneous firms business cycle model with uncertainty and disasters and use this to analyze our empirical results. Finally, using our VAR results we estimate COVID-19 will reduce US GDP by 9% in 2020 based on the initial stock market returns and volatility response.
(拙訳)
不確実性は景気後退期に上昇し、景気拡大期に下落する。しかしその因果関係は何だろうか? 我々は、株式市場の水準とボラティリティの多国間パネルデータを構築し、自然災害、テロリストの攻撃、および政治的ショックを、回帰ならびにVAR推計の操作変数として用いた。我々は、ボラティリティの上昇が成長を低下させる頑健な関係を見い出した。我々はまた、不確実性と災害を備えた不均一な企業の景気循環モデルを構造的に推計し、このモデルで我々の実証結果を分析した。さらに、VARの結果を用いて、当初の株式市場のリターンとボラティリティの反応に基づき、COVID-19が2020年の米GDPを9%減少させると推計した。
ここで紹介したバローのように、災害と金融市場ないし経済との関係については従前から研究が積み重ねられているが、Baker=Bloom=Terryは、自分たちの研究は災害そのものの影響に関心があるのではなく、災害が水準とボラティリティを動かす点に利用価値を見い出しているのだ、と断っている。