前例の無いCOVID-19の株式市場への影響

不確実性指数で有名なScott R. Baker(ノースウエスタン大)、Nicholas Bloom(スタンフォード大)、Steven J. Davis(シカゴ大)らが表題のNBER論文を上げている。原題は「The Unprecedented Stock Market Impact of COVID-19」で、他の共著者はKyle J. Kost(シカゴ大)、Marco C. Sammon(ノースウエスタン大)、Tasaneeya Viratyosin(ペンシルベニア大)。
以下はその要旨。

No previous infectious disease outbreak, including the Spanish Flu, has impacted the stock market as powerfully as the COVID-19 pandemic. We use text-based methods to develop this point with respect to large daily stock market moves back to 1900 and with respect to overall stock market volatility back to 1985. We also argue that policy responses to the COVID-19 pandemic provide the most compelling explanation for its unprecedented stock market imact.
(拙訳)
スペイン風邪を含め、COVID-19パンデミックほどその発生が株式市場に大きな影響を与えた感染症はこれまで存在しない。我々は文書ベースの手法でこの点を追究し、日次の大きな株式市場の変動を1900年まで、株式市場全体のボラティリティを1985年まで遡った。我々はまた、COVID-19パンデミックへの政策対応がこの前例の無い株式市場への影響についての最も有力な説明だと論じる。

以下は1900年以降の株式市場の変動のグラフ。
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変動が大きくなった原因の候補として論文では、政策対応以外に、パンデミックの深刻さ、スペイン風邪の当時と比べた情報拡散の速さ、現代経済の相互連関の強さを挙げているが、いずれも完全な説明ではないと退けている。その理由として、スペイン風邪の死亡率はより深刻だったが、数ヶ月のスパンで見ても株式市場への影響は限られていた、と指摘している。
その上で、政策対応が株式市場に悪影響を与えたことを病気のメカニズムそのものになぞらえている。

In our view, the policy response to the COVID-19 pandemic provides the most compelling explanation for its unprecedented impact on the stock market. Oddly enough, this somewhat mirrors the impact of COVID-19 in more severe cases, where an autoimmune response generates a cytokine storm, damaging lung tissue (Shi et al., 2020)
(拙訳)
我々の見解では、COVID-19パンデミックへの政策対応がこの前例の無い株式市場への影響についての最も有力な説明になっている。奇妙な話だが、これは自己免疫反応がサイトカインストームをもたらして肺組織を傷付けるというCOVID-19の重症例における影響にどこか似ている(Shi et al., 2020)。