最近、クルーグマン(cf.night_in_tunisiaさんの邦訳)、サムナー、マシュー・イグレシアス、デビッド・ベックワース(cf.Hicksianさんの邦訳)、Tim Duy(cf.本石町日記さんの要約(ブクマ))が、相次いで表題の7/7ワシントンポスト記事を取り上げた(原題は「Federal Reserve weighs steps to offset slowdown in economic recovery」)。
その記事では、FRBが今後取り得る手段として以下の3つが挙げられている。
- 政策声明の文言を強める
- 準備預金への0.25%の付利を無くして0%にする
- 銀行の貸し出しへのインセンティブを僅かでも強める。
- ただ、幾つかの信用市場に技術的な問題を引き起こすかもしれない。
- モーゲージ担保証券を新規に購入する
しかしながら、こうした手段のいずれも、2008年末から2009年初めにかけての大規模な資産購入に匹敵するだけの効果は生み出さないだろう、と記事は観測している。
また大規模な資産購入プログラムを組めば良いではないか、と言うエコノミストもいるが、既に前回の購入によってモーゲージ金利が史上最低水準まで押し下げられて、それが住宅市場を下支えしている現在、その金利をたとえばもう0.25%引き下げても効果は乏しかろう、とFRB首脳は見ているとのこと。それに、そうした介入によって民間のモーゲージ証券の買い手の役割が薄められた点も彼らは気にしているとの由。
あとは国債のマネタイズに対する海外投資家への懸念というお決まりの話も、FRBが今後の政策に慎重になるべき理由の一つとして挙げられている。
とは言うものの、FRBが今後の大規模な資産購入計画をまったく選択肢から除外したわけではなく、景気が引き続き順調に回復するという彼らの基本予測が外れ、デフレのリスクが高まるならば、彼らはそうした手段を取る用意がある、と記事は最後に述べている。
冒頭に挙げた各論者は、この記事で描写されたFRBの慎重姿勢に対し、一斉に不満を表明している。ただ、その中でもクルーグマンや、クルーグマンの同ブログエントリを受けたMark Thomaは、金融政策への期待し過ぎにも釘を刺している。しかし、そのクルーグマンも、その後のブログエントリやNYT論説(cf.optical_frogさんの邦訳)ではFRB批判を強めており、徐々にエコノブロゴスフィアでのバーナンキ包囲網が狭まってきた感がある。