と題された記事がWSJブログに上がっていた(原題は「Did Fed Cause 2000s Bubble by Holding Rates Too Long Too Low?」)。内容は欧州中央銀行のエコノミストAngela MaddaloniとJose-Luis Peydroの共著論文「Bank risk-taking, securitization, supervision and low interest rates: Evidence from the euro area and the U.S. lending standards」の紹介。
WSJのブログ記事自体はWSJ日本語版で邦訳が出ているので、以下では論文から主な図表をピックアップして紹介してみる。
最初の図は、政策金利のテイラールールからの乖離と、企業およびモーゲージに対する銀行の貸出基準(数値が高いほど基準が厳しい)の時系列推移を並べて描画したグラフ(上図がユーロ圏、下図が米国)。
これを見ると、確かに2000年代にテイラールールからの乖離と貸出基準はパラレルに動いているように見える。
次いで、それを散布図として描画したグラフ。
まずはユーロ圏単独のグラフ(縦軸はテイラールールからの乖離、横軸は上図が企業への貸出基準、下図がモーゲージへの貸出基準)。
論文では続いて各種回帰分析を行なっているが、以下では
とした回帰分析のうち、米国のみを対象とした分析結果をピックアップしてみた。
これを見ると、テイラールールからの乖離は有意にプラスで効いているのに対し、長期金利はむしろ有意にマイナスに効いている(=長期金利が高くなると貸出基準がむしろ緩む)。この結果は、長期金利が世界的な貯蓄過剰(global savings glut)によって低く留まり、それがバブルを誘発した、というグリーンスパンやバーナンキを初めとするFRBの説明に反している。そうではなく、長期金利ではなく政策金利を低く留めたことがバブルを誘発した、というのが著者たちの指摘である。
また、次の回帰分析では、政策金利をテイラールールより低く据え置いた期間(=連続した四半期の数)を説明変数に加えている。
すると、テイラールールからの乖離の有意性は消え、その代わり、新たに加えた説明変数(低金利期間)が対企業と対消費者で有意となっている。
さらに、低金利期間とテイラールールからの乖離との交差項を説明変数に加えると、その項はすべての貸出基準について有意となる。従って、住宅バブルは、政策金利をあまりに低くかつ長く据え置いたことが原因となって発生した、というのが著者たちの主張である。