ブレグジットがトランピットより高く付く理由

クルーグマン22日エントリで、読者からの質問に応えて、ブレグジットの経済的損失が貿易戦争(ここで彼はそれをTrumpit=トランピットと名付けている)よりも大きくなる、という点を以下の図で説明している。

これは、ここで紹介した17日エントリにおける政府を独占企業に見立てた厚生分析図である。「Welfare loss from distortion」と書かれた三角形が、同エントリで分析したトランピットによる厚生損失である。これは、関税による厚生損失を分析する場合に通常使われる図(cf. 例えばここ)の死荷重に相当する。一方、「Welfare loss from higher trade costs」と書かれた四角形は、後者の図では政府の税収に相当し、トランピットにおいては厚生損失にはならない。しかしブレグジットでは、それは単なる経費の増大を意味するので、厚生損失になる。また、ブレグジットでは三角形の部分も(正確にはブレグジットの場合は価格の歪みが原因ではなくなるが)やはり厚生損失となる。その結果、関税による輸入コストの増大とブレグジットによるそれが同じだとしても、四角形の部分だけブレグジットの厚生損失が大きくなる。
実際の数字を、クルーグマンは次のように試算している。彼の以前の推計*1によれば、ブレグジットによって英国と欧州の他の国との貿易は、GDPの15%から10%に減るという。即ち、需要の弾力性が3だとすれば、貿易コストは輸入価格の13%程度になる。その13%が関税ならば、全体のコストはGDPの0.13*2.5%=0.3%程度となる(ここで2.5%は輸入の減少幅の半分)。しかし、もし13%がブレグジットによる貿易コストの増大ならば、乗じるのはブレグジット前後の輸入比率の平均である12.5%となる。その結果、全体のコストは1.6%程度と、関税ケースの5倍になる。

*1:cf. ここ