日本の系列システムとシリコンバレーの共通点

Economist's ViewがサマーズのWaPo論説から以下の一節を引用している

Matters are not as clear as is often suggested regarding short-term-driven “quarterly capitalism,” and I believe skepticism is appropriate toward arguments that horizons should be lengthened in all cases. A generation ago, Japan’s keiretsu system, which insulated corporate management from share price pressure by tying large companies together, was widely seen as a great Japanese strength; yet even apart from Japan’s manifest macroeconomic difficulties, Japanese companies lacking market discipline have squandered leads in sectors ranging from electronics to automobiles to information technology. Managements of companies that are dissipating the most value, such as General Motors before it needed to be bailed out, have often been the most enthusiastic champions of long-termism. Market participants who willingly place huge valuations on many Silicon Valley companies that lack any profits and have little revenue may be placing too much, not too little, weight on the distant future. That, at least, is the implication of the technology bubbles we have seen.
(拙訳)
短期的視野に基づく「四半期資本主義」が良く槍玉に挙げられるが、これについては話はそれほど単純ではない。いかなる場合でも長期的視野を持つべき、という議論は懐疑的に受け止めるのが適切だと私は思う。30年ほど前、大企業を束ねることにより株価の圧力から企業経営を防護するという日本の系列システムは、日本の大いなる強みであると広く考えられていた。だが、日本のマクロ経済の問題が明らかになったことを別にしても、市場規律を欠いた日本企業は、電機から自動車から情報技術に至る多くの分野で主導権をふいにした。救済が必要になるに至ったゼネラルモーターズのような価値の最大級の喪失を招いた企業の経営者は、しばしば最も熱心に長期主義を標榜する人たちであった。利益をまったく出しておらず売上高も無きに等しい多くのシリコンバレーの企業に対し喜んで非常に高い価格付けをする市場参加者は、遠い将来について、過小ではなく過大な重きを置いているのかもしれない。少なくとも我々が経験したITバブルはそう物語っている。


これだけを読むとサマーズは長期主義をひたすら批判しているようにも思われるが、この前段では、物言う株主によって適切な投資が抑えられてしまうことへの懸念や、中間所得層たる被雇用者への適切な利益還元を訴えている。ただ、後者を訴える際に、最低賃金への支持や、福利厚生の義務化や、税制による従業員への利益還元の促進を主張したため、ジョン・コクランが猛反発している*1

*1:ただしコクランはWaPo論説ではなく同内容のFT論説を参照している。ちなみにWaPo論説がNYSEのフロアの写真をあしらっているのに対し、FT論説は東芝の写真をあしらっている。