内延効果に沿った労働調整

というNBER論文が上がっている。原題は「Adjusting Labor Along The Intensive Margins」で、著者はDaniel S. Hamermesh(テキサス大オースティン校)、Jeff Biddle(ノートルダム*1)。
以下はその要旨。

We expand the analysis of cyclical changes in labor demand by decomposing changes along the intensive margin into those in days/week and in hours/day. Using large cross sections of U.S. data, 1985-2018, we observe around 1/4 of the adjustment in weekly hours occurring through changing days/week. There is no adjustment of days/week in manufacturing; but 1/3 of the adjustment outside manufacturing occurs through days/week. The desirability of bunched leisure implies that secular shifts away from manufacturing have contributed to increasing economic welfare.
(拙訳)
我々は、内延効果に沿った変化を週当たりの労働日数と一日当たりの労働時間に分解することにより、労働需要の循環的変化の分析を拡張した。1985-2018年の大量の米国の横断データを用いて我々は、週当たり労働時間の調整の約1/4が週当たり労働日数を変えることにより生じたことを観測した。製造業では週当たり労働日数の調整が見られなかったが、製造業以外では調整の1/3が週当たり労働日数を通じて行われた。まとまった余暇が望ましいことは、製造業から労働者が離れる長期的な傾向が経済厚生の向上に寄与したことを意味している。

ungated版は見当たらなかったが、半世紀以上に亘る勤務日の推移:週4日労働の台頭 - himaginary’s diaryで紹介した同じ著者たちによる論文の関連論文かと思われる。
労働者はいずこ? 大退職から静かな退職へ - himaginary’s diaryで紹介した論文ではコロナ禍以降の内延効果に沿った労働時間の減少を示していたが、今回の論文によると、週当たりの勤務日数を減らす形でそれ以前からその傾向は存在していたということになる。日本で同様の傾向が存在するかどうか、存在するとすれば米国と同様に製造業と非製造業で顕著な差があるかどうか知りたいところであるが、いわゆるパート勤務の年収の壁が分析に大きな影響を与えそうである。

*1:NBERのプロフィルはミシガン州立大のままだが、Jeff Biddle | Department of Economics | University of Notre Dameによると昨年ノートルダム大に移籍している。