というNBER論文が上がっている。原題は「Exorbitant Privilege and the Sustainability of US Public Debt」で、著者はJason Choi(トロント大)、Duong Q. Dang(ウィスコンシン大学マディソン校)、Rishabh Kirpalani(同)、Diego J. Perez(NYU)。
以下はその要旨。
We study the extent to which the perceived cost of losing the exorbitant privilege the US holds in global safe asset markets sustains the safety of its public debt. Our findings indicate that the loss of this special status in the event of a default significantly augments the debt capacity for the US. Debt levels would be up to 30% lower if the US did not have this special status. Most of this extra debt capacity arises from the loss of the convenience yield on US Treasuries, which makes debt more expensive following its loss and provides strong incentives to repay debt.
(拙訳)
米国が世界の安全資産市場で有している法外な特権を失うことの認識されるコストが、同国の公的債務の安全性をどの程度維持しているかを我々は研究した。我々の発見が示すところによれば、債務不履行時にこの特別な地位を失うことは米国の債務負担能力を有意に高める。米国がこの特別な地位を有していなければ、債務水準は最大30%低かったであろう。この追加の債務負担能力の大部分は、米国債のコンビニエンスイールドの喪失から生じる。その喪失によって債務はより高くつくものとなり、債務を返済する強い動機が提供されるのである。
ジスカール・デスタンのいわゆる法外な特権で準備通貨国は割安に借り入れられる、というのは世界の保険業者としての米国 - himaginary’s diaryでIMFの紹介記事を引用したHélène Reyらが米国について法外な特権と法外な義務 - himaginary’s diaryで取り上げた論文などで示してきたところであり、獲得され喪失した法外な特権:財政面の含意 - himaginary’s diaryで紹介した論文ではかつての英国について示されたところである。ただ、それによって米国の債務が過大になっている、という見方は、債務比率をどう考えるべきか? - himaginary’s diaryや陰鬱さを増す科学 - himaginary’s diaryで紹介したように、デロングが強く異を唱えてきたところでもある。