政策の不確実性は景気を冷やすのか?

昨日のエントリで紹介したカール・スミスの10/2エントリでは、政策の先行きの不透明さが企業家心理を冷やしているという議論*1に触れていたが、10/10エントリで彼は、そうした政策の不確実性を指数化した研究について論じている*2。その研究を行ったのはスタンフォード大学のScott R. Baker、Nicholas Bloomとシカゴ大学のSteven J. Davisの3人で、彼らはそれについて論文を書いたほか、ブルームバーグに記事を寄稿している*3


その指数のグラフは以下の通り。


このグラフを見てスミスは次の二点を指摘している。

  1. オバマ政権の景気刺激策も医療改革も指数には表れていない。オバマが大統領に選ばれた(2008年の)選挙と2010年の中間選挙は指数に表れているが、その間は「比較的」静かな谷間となっている。
  2. 債務上限問題は非常に大きく、リーマンよりも大きな政治的不確実性をもたらしている。


その上で、以下のように論じている。

  • このグラフでは債務上限問題が過去25年間で最大の不確実性をもたらしたことになっている。確かに債務上限問題は大ごとだったが、最終的には上手く解決された。一方、リーマンは悪い結果に終わった。債務上限問題がリーマンよりも大きな不確実性をもたらしたというのは少しおかしいのではないか。


なお、このエントリのコメント欄にはデビッド・ベックワースが姿を現し、ユーロ危機が現在進行形の山ではなく昨年の山にラベル付けされていることを訝しみ、この指数はどのように構築されているのか、と問い掛けている。ちなみに指数の構築についてはブルームバーグ記事には以下のように記述されている:

We constructed our index by combining three types of information: the frequency of newspaper articles that refer to economic uncertainty and the role of policy, the number of federal tax code provisions set to expire in coming years, and the extent of disagreement among forecasters about future inflation and government spending.
(拙訳)
我々は3種類の情報を結合することにより指数を構築した:経済の不確実性と政策の役割に言及した新聞記事の頻度、翌年に期限切れとなる連邦税法の条項の数、将来のインフレと財政支出に関する予測者の意見の不一致度。

*1:日本では、例えば池尾和人氏が本日の日経の経済教室でそうした主旨の記事を執筆している(cf. ここここ)。

*2:スミスはVia Don Boudreauxとしてこちらのブログ記事にリンクしているが、実際にはその記事の筆者はRobert Higgs。

*3:そのブルームバーグ記事には前述のHiggsのほか、マンキューがリンクしている。