FRBは法を犯している?

22日エントリではStephen Williamsonの名目GDP目標批判を紹介した。もとよりクルーグマンをはじめとするケインジアンが大嫌いで、さらにマーケットマネタリストの名目GDP目標も受け付けず、となると、Williamsonは流動性の罠はマクロ経済政策ではどうしようもないと考えているのか、と思いきや、そのエントリのコメント欄では彼流の解決策をあっさり提示している。

"Wouldn't negative interest (or a tax) on excess reserves push a lot of that out and cause inflation? I know you've said the Fed isn't authorized to do that, but they're already breaking the law."

Yes, if you allow the Fed to tax reserves, there's no liquidity trap. Problem solved. The law that permits interest on reserves seems deeply flawed, but I doubt that the Fed would want to violate it in such an obvious way as to charge fees for holding reserve balances.
(拙訳)
「超過準備に負の金利(もしくは税)を課せばその大部分を外に押し出し、インフレを起こすことになりませんか? 貴兄がFRBにその権限は無いと述べたことは知っていますが、彼らは既に法を犯しているのです」

確かに、もしFRBが準備預金に課税することを認めたならば、流動性の罠は存在しなくなる。問題解決、というわけだ。準備預金への付利を認めた法は深刻な欠陥を抱えているように見えるが、とは言うものの、準備預金の残高を保持していることに対して対価を科すようなあからさまな形でFRBが法を犯したいか、という点については疑問に思う。


どこまで本気かは分からないが、準備預金へのマイナス金利によって流動性の罠は脱出できる、とWilliamsonは述べている。


なお、これはあるコメンターに応答したものだが(最初の鍵括弧内はそのコメンターの文章の引用)、元のコメントでは「they're already breaking the law(彼らは既に法を犯しているのです)」というところでUneasy Moneyというブログの10/10付けエントリにリンクしている。そのエントリでは「Financial Services Regulatory Relief Act of 2006」から以下の条文が引用されている。

Balances maintained at a Federal Reserve bank by or on behalf of a depository institution may receive earnings to be paid by the Federal Reserve bank at least once each calendar quarter, at a rate or rates not to exceed the general level of short-term interest rates.
(拙訳)
預金受け入れ機関もしくはその代理のFRBにおける預金は、少なくとも四半期に一度支払われる利子所得をFRBから受け取ることができる。その料率は短期金利の一般的な水準を超えないものとする。

そこのブログ主(David Glasner)は、現在の3ヶ月のTビルの金利が0.1%で、FRBの準備預金への付利が0.25%であることを考えると、この条文は守られていないことになるではないか、と指摘している。さらに、他ならぬStephen Williamsonが昨年4月の段階でそのことに気付いていたことも指摘している。
ちなみに、そのブログエントリにはスコット・サムナーも姿を現し、自分もそのことに気付いて前日にエントリを書き上げていたのだが、その法律のことをもっと良く理解するまで投稿を延期していた、とコメントしている。