という点についてジョン・コクランが自ブログエントリでFRB論文に反論し、それを本石町日記さんが一連のツイートで紹介している。
それについて福永顕人さんが以下のように反応し、
本石町日記さんが以下のように答えている。
FRBの金融政策のリバースレポへのシフトについては以前に関連論文をここで紹介したことがあったが、コクランがリンクした論文によると、FRB自身も2013年9月以降に研究と実験を進めてきたという。ただ、同論文では、銀行以外の金融機関がFRBと直接取引できるようになることにより、いったん危機が起きた時の金融システムの不安定性が増すのではないか、という懸念を示している。
これに対するコクランの反論を乱暴に一言でまとめてしまうと、プレイヤーが増えても金融資産の総需給は変わらないのだから最終的な影響は無いのではないか、というものである。
それに対し、コクランのエントリでは匿名のコメンターが以下のように指摘している。
I think you are mistaken about the way the ON RRP facility works. MMMF and GSEs who participate are not posting central bank reserves as collateral. They are posting cash. Investors place money in an MMMF, or the GSEs receive money from the stream of mortgage payments that homeowners make on their mortgages, and need to invest that cash somewhere. Right now, they cannot deposit it at the Fed and make 25bp. So they lend out the cash in the wholesale money markets. this is why the general collateral repo rate for Treasuries has been trading around 8bp - 16bp for the past year and why the Fed could not establish a floor under short term rates by just paying IOER. If the Fed starts raising the ON RRP rate, they can move short term rates up without changing the size of their balance sheet. that's the point.
The concern about runs stems from the fact that MMMFs and GSEs could simply stop transacting with any private sector counterparties if there was some sort of crisis/scare and run straight to the safest counterparty in the world - the Fed - if there was no cap on the ON RRP facility. It is a legitimate concern, as tri-party repo markets would simply cease to exist, and that's not what a liquidity provider of last resort wants to see - they want to see the markets open and liquid.
(拙訳)
翌日物リバースレポ制度がどのように機能するかについて貴兄は誤解されているのではないかと思う。参加するMMMF(短期金融資産投資信託)やGSE(政府支援機関)は、中央銀行の預金準備を担保として提供するわけではない。彼らは現金を提供するのだ。投資家はMMMFに資金を投じる。GSEには、住宅保有者の不動産ローン返済によって資金が流れ込む。彼らは現金をどこかに投資しなくてはならない。現時点では、彼らはそれをFRBに預けて25bpを得ることはできない。そこで彼らはホールセール金融市場で現金を貸し出す。それが昨年の国債GCレポ金利が8bp-16bp辺りで取引されていた理由であり、超過準備への付利を支払っているだけではFRBが短期金利の下限を確立することができなかった理由だ。もしFRBが翌日物リバースレポ金利を引き上げ始めたら、それによって自分のバランスシートのサイズを変えることなく短期金利を引き上げることができる。それこそがポイントだ。
もし何らかの危機や脅威があれば、MMMFやGSEは、民間部門のどの取引相手との取引も簡単に中止でき、翌日物リバースレポ制度に上限が無ければ、世界で最も安全な取引相手であるFRBのところに直行するだろう。そのことから取り付け騒ぎへの懸念が生じているわけだ。トライパーティーレポ市場が消えてなくなるのだから、それは正当な懸念である。流動性の最後の供給者はそうした事態を目にしたくはない。彼らは市場が開いていて流動性がある状態でいてほしいのだ。
また、コクランがリンクしたCecchetti & Schoenholtzブログエントリでは、銀行の預金流出という観点から、そうした「取り付け騒ぎへの懸念」がよりビビッドに描かれている。
Our primary concern with RRPs is not in normal times, but rather when the financial system comes under stress. In such circumstances, large-scale RRPs could trigger a disruptive bout of bank disintermediation. To see the risk, imagine that you are a large institutional investor or the treasurer of a large firm. Your cash on hand far exceeds the FDIC insurance limit. (According to Table I-C of the Quarterly Banking Profile for the first quarter of 2014, nearly 40% of domestic deposits are not insured by the FDIC, which also does not insure deposits abroad.) Now, imagine that the banking system starts to look shaky (again). Would you rather have your cash in a bank whose assets are of uncertain value or in an MMMF that lends only to the Fed against good collateral (using the RRP facility)? We expect that uninsured depositors would flee the banks for the MMMFs.
(拙訳)
リバースレポについての我々の主要な懸念は、通常時ではなく、金融システムに負担が掛かった状態の時にある。そうした状況下では、大規模なリバースレポは、銀行から一気に資金が流出するという混乱を招きかねない。そのリスクを理解するために、自分が大手の機関投資家もしくは大企業の財務担当者になったと想像して欲しい。貴兄の手元の現金は、FDIC(連邦預金保険公社)が保証する上限を遥かに超えている。(2014年第1四半期の四半期銀行統計の表I-Cによれば、国内預金の40%近くがFDICの保証対象外である。またFDICは海外預金は保証していない。)そして、銀行システムが(またもや)がたつき始めたように見える、と想像して欲しい。貴兄は資産価値が不確実な銀行に現金を置いておきたいと思うだろうか? それとも、(リバースレポ制度を利用して)安全な担保を取ってFRBにのみ貸し出しを行うMMMFに置きたいと思うだろうか? 我々は、保証対象外の預金者は銀行から逃げ出してMMMFに向かうものと予想している。