コトリコフの社会主義的解決策

昨日紹介したコトリコフの5つの政策提案のうち、4番目の賃金の硬直性の話がクルーグマンガルブレイスとコトリコフの論争を招いたが、残りの4つの提案をEconospeakでProGrowthLiberal(PGL)が俎上に載せている。曰く:

  • 5番目の提案は財政緊縮策であり、4番目の提案より馬鹿馬鹿しい。
  • 1番目の提案は超過準備への付利をやめろというものだが、コトリコフはそれによって銀行貸し出しが促進されるとしている。しかしFRBの緩和策は、どんなものであれ、それを目的としている。問題は銀行が新規貸し出しをしたがらないことではなく、総需要の落ち込みのために、企業が貸し出しを受けることに関心を持たないことにあるのだ。
  • 3番目の提案は、米国の企業に強制的に投資をさせよう、という点では1番目の提案と同じ趣旨と言える。企業は景気が良くなるのを待って投資するつもりだが、彼らが投資をしないと景気は良くならない。大統領が大企業1000社のCEOを一堂に集めて、今後3年間に投資を倍増させることを誓約させる、というのがコトリコフ案である。彼らが同時に投資すれば、その投資に見合うだけの需要も同時に創り出される、というわけだ。しかし、公共インフラ投資を増加させる法案も、同様の自律的回復をもたらす。ところがこれについてコトリコフは、新規歳入が無い限り雇用法案に含まれている一層の支出と減税を行う余裕は無い、という信じられないくらい馬鹿げた主張で財政刺激策を否定する。
    • (himaginary注)昨日紹介したコーエンは、他の4つのコトリコフ案には賛成するが、投資を政治化するこの案には賛成できない、としている。
  • 2番目の提案は、各企業が自発的に追加で7.5%の労働者を雇用し、かつ、この雇用を何としても維持することを大統領が各社の労働者と株主に要請する、というもの*1。労働者はそのために7.5%の賃下げを受け入れ、代わりに同額の株式を受け取る、との由。このクリエイティブな提案については他者に評価を任せる。


小生の個人的な感想を付け加えると、大統領が企業に要請して○○させる、という2番目と3番目の提案は、いかにも社会主義的で米国にはそぐわないのではないか、という気もする。

*1:ここでコトリコフは従業員100人以上の企業12万社を対象に論じてる。それらの会社の総従業員数は8000万人なので、その7.5%の600万人を失業者1400万人から吸収できれば、失業率が好況時の5%まで下がる、という計算。