この問いを投げ掛けるに当たってランズバーグは、以下の状況を想定している。
- 完全雇用が成立
- 貨幣の社会的コストがゼロ(=フリードマン・ルールが成立するような世界。いわば蛇口を捻れば必要なだけ貨幣が手に入る世界)
- 人々の貨幣保有の私的コストはゼロではない(∵貨幣保有による消費の機会コストが存在する)
その場合、人々は私的コストを減らそうとして貨幣保有を減らそうとする。即ち、過剰支出を行う。
その支出によって価格が上昇すると、以下の2つの効果が生じる。
- 買い手の損失が発生。ただしこれは売り手の利得によって必ず相殺される。
- 実質貨幣残高が減少。
後者の効果により、支出主体以外の周囲の貨幣保有者は損失を蒙る。これは社会的コストと私的コストの乖離が存在している場合、必ず生じる損失である、とランズバーグは言う。
しかし、価格が固定されている場合は、その上昇による実質貨幣残高の減少という現象が生じない。しかし社会的コストと私的コストの乖離が存在している限り、何らかの損失が周囲に生じるはずである。それは一体どこに現れるのか、というのがランズバーグの疑問である。
この疑問に対し、次のエントリでランズバーグ自身が出した回答は、価格が固定されている場合、発行主体の政府を除いて、貨幣の社会的コストはゼロでは有り得ない、というもの。即ち、仮に周囲の人が貨幣を1ドル自分に譲渡した場合、価格が伸縮的ならばその分下落し、周囲の持つ実質貨幣残高は変化しない。しかし価格が固定されている場合、実質貨幣残高は減少し、その分周囲の人は貧しくなる。
一方、ブロゴスフィアでお馴染みの面々は、最初のエントリのコメント欄で――カール・スミスとRoweは自ブログエントリでも――次のような回答を提示した。
- Bill Woolsey
- 商品の不足が発生し、それが周囲の不利益となる。
- Andy Harless
- Woolseyに賛成。