トランプの大規模インフラ投資計画? これは罠だ。

と題したWaPo論説を、オバマ政権やヒラリー・クリントンの選挙活動で顧問を務めたロン・クラインが1ヶ月ほど前に書いている。原題は「Trump’s big infrastructure plan? It’s a trap.」で、アクバー提督の有名な台詞を意識しているのかな、と思ったら、案の定そうだった
以下はその冒頭。

As the White House official responsible for overseeing implementation of President Obama’s massive infrastructure initiative, the 2009 Recovery Act, I’ve got a simple message for Democrats who are embracing President-elect Donald Trump’s infrastructure plan: Don’t do it. It’s a trap. Backing Trump’s plan is a mistake in policy and political judgment they will regret, as did their Democratic predecessors who voted for Ronald Reagan’s tax cuts in 1981 and George W. Bush’s cuts in 2001.
(拙訳)
オバマ政権の大規模なインフラ投資計画である2009年米国復興法の導入の監督責任を担っていたホワイトハウス当局者として、次期大統領のドナルド・トランプのインフラ投資計画を受け入れようとしている民主党員に対して単純なメッセージを送りたい:やめろ、これは罠だ。トランプの計画を支持することは、いずれ後悔することになる誤った政策ならびに政治的判断である。それは、彼らの先達の民主党員が、1981年のロナルド・レーガンの減税や2001年のジョージ・W・ブッシュの減税に賛成したのと同じ轍を踏むことになる。

理由としてクラインは、以下の4点を挙げている。

  1. トランプの計画は実際にはインフラ投資計画ではない
    • それは、公益事業や建設部門への投資家への減税計画であり、請負業者への大規模な企業福祉計画である。
    • トランプの計画は、ヒラリー・クリントンの2016年のインフラ投資計画提案と違い、新しい道路や橋や下水道や空港に直接に資金を支出するわけではない。利益の出る建設計画に資金を拠出する民間投資家への税控除計画である。
    • 電力網の近代化やエネルギーパイプラインの延長といったそれらのプロジェクトは、計画済み、もしくは既に進行中である。控除された税額分が計画の拡大や他の建設計画に振り向けられる保証はなく、既存のプロジェクトに投資する投資家の懐を潤すだけである。
    • しかも、地方の下水道の再整備、既存の道路の修理、料金を徴収しない橋の架け替え、といった民間投資家への魅力を欠いた極めて必要性の高いインフラ投資計画は、トランプ計画では支援されない。
    • この計画によれば、請負業者は10%の税引き前利益のマージンが得られる。大規模減税と合わせると、納税者の負担で得られる請負業者の税引き後利益は850億ドルに達する。
  2. トランプの計画は実際には雇用を増やさない
    • トランプの計画は、プロジェクトではなく投資家に補助金を与え、橋ではなく税控除に資金を支出する。また、新規雇用を促す仕組みは存在しない。
    • そもそもトランプ計画の立案者が、これが雇用を増やすと言ったことはない。むしろ、その計画を受け入れようとする民主党員がそう言っている。
  3. 1370億ドル程度の赤字拡大につながる
    • 減税を賄う歳入の仕組みは考えられていない。
    • 財政赤字が成長を押し上げると考える経済学者もいるが、トランプの手に掛かれば間違いなく財政赤字は医療や教育や福祉を削減するための正当化の材料に使われる。ちょうど、30年前にレーガン減税による財政赤字を理由に福祉が削減されたように。
  4. 民主党の原則を切り崩すような政策変更を伴う
    • 米国復興法への共和党のアプローチに鑑みると、そうした政策変更が満載となるだろう:
      • 建設プロジェクトにおける一般賃金の保護は緩和され、労組は弱体化し、最終的には労働者の所得は削られるだろう
      • 環境保護の規則はほぼ間違いなく骨抜きにされる