期間構造への回帰

均衡イールドカーブが9月の日銀の金融政策決定会合で議論されたことが6日公表の議事要旨で明らかになったとして話題になったが、Francis Dieboldもたまたまほぼ同タイミングの5日の表題のブログエントリ(原題は「Regression on Term Structures」)で関連研究に言及している

An important insight regarding use of dynamic Nelson Siegel (DNS) and related term-structure modeling strategies (see here and here) is that they facilitate regression on an entire term structure. Regressing something on a curve might initially sound strange, or ill-posed. The insight, of course, is that DNS distills curves into level, slope, and curvature factors; hence if you know the factors, you know the whole curve. And those factors can be estimated and included in regressions, effectively enabling regression on a curve.
(拙訳)
動学的ネルソン=シーゲル(DNS)の利用とそれに関連した期間構造のモデル化戦略(これこれ参照)における重要な洞察は、期間構造全体に対する回帰が可能になった、ということである。曲線に何かを回帰する、というのは一見すると奇妙ないし不良設定問題に思われるかもしれない。ここでの洞察はもちろん、DNSが曲線を水準、傾斜、および曲率で表す、ということである。従ってそれらのファクターが分かれば、全曲線が分かる。そしてそれらのファクターは回帰で推計したり回帰式に含めたりすることができるので、曲線への回帰が事実上可能になったわけだ。


Dieboldはこの手法を用いた最近の研究として、井上篤ヴァンダービルト大学教授とBarbara Rossiポンペウ・ファブラ大学カタルーニャ高等研究所教授の共著論文を紹介している。同研究によると、非伝統的金融政策も伝統的金融政策と概ね同様の影響をイールドカーブを通じて実体経済に及ぼしたという。その際、生産には傾斜要因が、インフレには曲率要因が寄与したとの由*1

*1:なお、論文では曲率要因が寄与する期間が短期か長期かを非伝統的金融政策と伝統的金融政策で切り分けようとしているが、その辺りはまだきちんと整理されていないように思われる(記述に混乱が見られる)。