IS-LMを教えない人の3分類

FRB入りが予定されているマービン・グッドフレンドが2012年のインタビューで「私はIS-LMを教えない(I don't teach IS-LM)」と発言していたという話題を受けて、デロングがIS-LMを教えない人を以下の3タイプに分類している

  1. 経済の働きについて完全に説得力を欠いた誤った主張をしている
    • Md = PY/VでVが一定ないし変化が緩やかと考えるならば、IS-LMを教える必要はなくなる。
  2. 怠け者、もしくは愚か者、もしくはその両方
    • Vが変化することを受け入れるならば、横軸にY、縦軸にVの決定要因を取ってMd = PY/Vの関係を描いたグラフはLM曲線となる。その曲線上のどこに経済が位置しているかを知るためには、もう一つの曲線――IS曲線――が必要となる。IS-LMを教えないと宣言することは、LM曲線のどこに経済が位置しているかを知る必要は無い、と言っているのに等しい。そんなことを言うのは怠け者か愚か者だけ。
  3. カーネギー=メロンの特定の経済分析の伝統に対する部族的な帰属意識を公言している
    • ドーンブッシュはかつてそうした分析を「初期の間違いを犯したジム・トービン」と呼んだ。
    • デロングに言わせれば、そうした分析は真の問題に光を当てず熱を当てるだけ(=解明を助けるでなく騒ぎ立てるだけ)。

グッドフレンドについてデロングは3番目の解釈を取っている。


その上でデロングは、FRBのインフレを安定化させる能力と意思に懸念が生じると、人々が経済行動を抑制してしまう、というグッドフレンドの同じインタビューの別の発言を槍玉に挙げ、ここで彼は人々の期待によってIS曲線が左側にシフトしてしまうことを問題視しているのであり、まさにIS-LMモデルの枠組みで考えているではないか、と指摘している。そして、この時のグッドフレンドの考えが間違っていたことが、その後インフレが上昇どころか低下したことで明らかとなったが、それに対する説明や、金融政策に関する考えをどう変えたかを聞きたいものだ、と皮肉ってエントリを結んでいる。