米国の世界への輸出と中国からの輸入が雇用に与えた効果を定量的に評価したNBER論文が同時に2本上がっている。いずれもUCデービスのRobert C. Feenstraが共著者の一人になっており、一つはアイダホ大学の笹原彰氏と共著した「The 'China Shock', Exports and U.S. Employment: A Global Input-Output Analysis」(ungated版)で、もう一つは清華大学のHong Ma、Yuan Xuと共著した「US Exports and Employment」(ungated版)。手法としては、前者がタイトルの通り世界産業連関表データベース(The World Input-Output Database)を使っているのに対し、後者は産業および地域(commuting zone*1)レベルのデータを用いている。デロングも9月末に両論文を取り上げ、読むべし(Should-Read)、としている。
前者の要旨で示されている数字を箇条書きにすると以下の通り。
- 1995-2011年の米輸出による労働需要の増加
- 製造業:200万人
- 資源産業:50万人
- サービス:410万人
- 計:660万人
- サービスの労働需要のうち1/3は製品(製造業と資源)の中間需要によるものなので、製品輸出による労働需要の増加は370万人
- 同期間の中国からの製品輸入による労働需要の減少
- 製造業:140万人
- サービス:60万人
- 資源産業は微減
- 計:200万人
- よって、米国の世界への製品輸出と中国からの製品輸入で創出された純労働需要は170万人
- なお、輸入を全世界に広げると、製品輸出入ベースでは純労働需要はマイナスになるが、サービスも含めるとプラスになる
後者の要旨では、米国の全世界への輸出による雇用創出と中国からの輸入競合による雇用喪失を比較し、1991-2007年ではややマイナス(20-30万人)だったが、1991-2011年まで分析期間を延長すると、地域レベルでほぼとんとんになった、という結果を報告している。