米国は完全雇用に近いか?

ディーン・ベーカーが、クルーグマンの2/5論説について、株式市場や住宅市場やトランプ政権の能力の評価は概ね同意するとしつつも、現状は完全雇用に近いという見立てに異を唱えている。以下はその異論のポイント。

  • 高齢化が労働参加率を全体的に引き下げるというクルーグマンのコメントは正しいが、働き盛り(25-54歳)の労働者の就業率は未だ不況前を下回っており、2000年の水準よりかなり低い。その落差は性別や学歴によらず(一定値ではないにせよ)存在しており、供給面が原因ではなさそう。即ち、もっと需要があればもっと多くの人が働いていると考えるべき理由がある。
  • 4.1%の失業率というのは過去45年の基準に照らせば低いが、日独など他の主要国の失業率は今や、僅か4,5年前にほぼすべての経済学者が考えていたであろう水準を大きく下回っている。インフレスパイラルを引き起こすことなしに米国の失業率が3.5%ないしそれ以下まで低下しない理由はないのではないか。
  • クルーグマン離職率が不況前の水準にほぼ戻っており、データ初期の2001年の水準と比べてもそれほど低くない、と述べている。しかしそれは構成効果によるところが大きい。離職率は製造業や政府部門といった労働力人口比率が低下したところで低く、レストランや専門サービス・企業向けサービスといった比率が上昇したところで高い。
    • 部門内の推移はそれほど芳しくない。小売業は過去半年で平均2.9%弱だったが、2006年のピーク月には3.4%で、2001年は3.8%だった。大不況の最悪時でも1.9%だったことを考えると、それは小さな差ではない。
    • ホテル・レストラン部門も同様。過去半年の平均は4.3%だったのに対し、2006年の前半は5.2%で、2001年の前半は5.4%だった。
  • 離職率が低いということは、労働者の労働市場の見通しに対する確信が未だし、ということ。自発的失業率も同様の図柄になっており、過去3ヶ月の平均が11%だったのに対し、2006年のピーク月には12%を超えていて、2000年のピークの3ヶ月には14%を超えていた。