一般人との対話に臨む経済学者が守るべき4箇条

レンールイスらが経済学者の一般人との対話の仕方についてツイッター上で議論したのを受けて、クリス・ディローが、表題の4箇条を説いている。ディローは、ブレグジットや緊縮策についての経済学者の影響力が十分ではなかったことを認めた上で、一般の人に広く耳を傾けられている成功例としてティム・ハーフォードとスティーブン・レビットを挙げている。また、自らがインベスターズ・クロニクル誌に書いているコラムもそこそこ上手く行っているという。

  1. 経済学者は、人々にとって自らのアイデンティティの一部になっている考えに挑むことはできない
    • 誰かに「経済学によればあなたは阿呆だ」と伝えた場合、仮にそれが完全に正しくても、共感を持って受け入れられることはない。
    • ヤバい経済学が成功し、ブレグジットが失敗したのはそれが一因。人々は、力士が八百長をするか否かについて強い予断を持っていなかったが、EUについては持っていた。
    • ディローのICコラムでも、読者は自分が馬鹿だということを聞きたいわけではなく、お金を儲ける、ないし大きく損しないことを求めているのだ、ということを踏まえ、ケインズのいわゆる歯医者を演じ、読者に向かって馬鹿だと言うことなしに謙虚かつ中身のある助言を提供するよう努めている。
  2. コンセンサスではなく事実に訴える
    • 「多くの経済学者はxだと考えている」と言っても、なぜ彼らはそう考えているのか、という疑問を招くのがせいぜいのところ。下手をすると、専門家への冷笑を招きかねない。事実を伝える方が良い。
    • 例えばクリス・ガイルズは、英国のスペインとの貿易は豪州との貿易の3.3倍だと述べたが、これは引力モデルについて人々に注意喚起する良い方法。
    • ディロー自身の経験でも、ディフェンシブ株やモメンタム株は市場を上回る傾向にある、という指摘をした時が最も反応が良かった。
    • 事実はそれ自体が有用であるだけでなく、何をお前は知っているのだ、という疑問に答え、読者を惹き付ける。
  3. 知っていることと知らないことを明確にする
    • 実際にはできないにも関わらず短期のGDPの動きを予測できると主張したこと、ショックの欠落という一時的な幸運に過ぎなかった「大平穏期」を称揚したことは、経済学者の評判を落とした。
    • また、決定係数が低い時や、相関係数が上下する時は、素直にそう言うべき。
    • 自分が得意とする範囲(circle of competence)をわきまえるべし。
  4. 上から目線で話さない
    • ディロー自身は、読者として専門家や成功したビジネスマンなど、知的で懐疑的な非経済学者を想定している(ただしブログではそれを常に守れていないかもしれない、と認めている)。
    • 例えば認知的不協和について書く際には、「だからあなたは馬鹿なんです」とは言わずに、「他の人々はこうした間違いを犯していますが、自分も同じ間違いをしないように注意しましょう」と言うように努めている。