中国のGDPの信頼性

ブルームバーグのニュースレターブル−ムバ−グ ブリーフ(Bloomberg Brief)で、ブルームバーグインテリジェンス(Bloomberg Intelligence)のアジア担当チーフエコノミストTom Orlik(twitter)が中国のGDPについて投げ掛けられた2つの疑問点を整理している(H/T FT Alphaville)。


一つはキャピタルエコノミクス(Capital Economics)のマーク・ウィリアムズ(Mark Williams)が呈した疑問で、中国のGDPを計算する際に、輸入デフレーターにおいて輸入価格の変動が正しく反映されていないのではないか、というものである。これについてOrlikは、次のような中国の国家統計局の反論を紹介している:曰く、確かに中国のデフレーターは最終財価格に基づいて算出されているが、最終財価格と中間財価格は通常は並行して動くし、そうでない場合は計算に修正を掛けている。
Orlikによれば、中間財価格を示す2つの価格は違った動きを示しているという。即ち、輸入価格は変動性が高く、キャピタルエコノミクスの指摘を裏付けているものの、生産者購買価格は生産者価格と同様の動きを示しており、国家統計局の主張に沿っている、とのことである。輸入財は中間財のごく一部に過ぎないことがそうした乖離をもたらしているのだろう、とOrlikは言う。
さらにOrlikは、確かにキャピタルエコノミクスの指摘するデフレーターの問題はあるかもしれないが、以下の図を基に、その経済成長率への影響は限られるのではないか、という見方を示している。

これは、2000年から2013年の中国の輸入を輸入価格指数でデフレートし、その値と生産者価格指数でデフレートした値との差を取って、それをGDPの誤差と見做したものである。その結果、成長率の上下動は大きくなるが、2014-2015年の成長率が大きく変化するかどうかは分からない、とOrlikは言う。一つの見方としては、過去のピークの成長率が高まったため(例:2007年…14.2%→15.3%)、そこからの低下が強調されることにはなるが、変動性が高いとそうした変化の重要性も薄まるのではないか、とOrlikは述べている。


もう一つはピーターソン国際経済研究所のNick Lardyによる、中国のデータを批判する人は、中国経済のサービス化を見落としているのではないか、という疑問である(cf. ここで紹介したスティーブン・ローチ論説)。批判者は李克強指数ないしそれに採用されている指標を持ち出してGDP成長率が過大ではないかと言うが、そうした指標はエネルギー集約的な重工業に偏っている、というのがLardyの指摘である。Orlikはそれに加えて、そうした指標もGDPも同じ国家統計局がソースなのだから、前者が後者より信頼できるという根拠が不明、と指摘している。その一方でOrlikは、消費関連の指標もそれほど良くないので、GDP統計が完全に正しいとも言い切れない、という曖昧な評価を下している。