西海岸の港湾争議は第一四半期のGDPの減速に寄与したか?

表題のNY連銀ブログ記事が、西海岸の港湾争議が第一四半期のGDPの減速に与えた影響を推計している(原題は「Did the West Coast Port Dispute Contribute to the First-Quarter GDP Slowdown?」;H/T Economist's ViewFRBサイトにも同時投稿されている)。

以下はその概要。

  • 争議の影響を受けた西海岸の港湾は、原油以外の商品の輸出の10%、輸入の20%が通過する。原油以外の商品の輸出はGDPの8.5%、輸入は12%を占める。
  • 第一四半期に西海岸港湾経由の輸出は20.5%、輸入は9%下落した。その前期比変化率は、他の港湾の変化率に比べて輸出は14%ポイント、輸入は17%ポイント低かった。
    • 商品や国特有の原因でそうした落差が生じている可能性を排除するため、商品・時間(商品は1万以上の分類が対象)と国・年をコントロールした分析を実施したが、同様の結果が得られた。また、金額ではなく重量でも分析したが、やはり同様の結果が得られた。
  • GDPへの影響を確認するには、西海岸港湾経由の減少分が、他の港湾(もしくは空運や陸運)経由への回送によって埋め合わされたかどうかをチェックする必要がある。ここで注意すべきは、この時期はドル高になっており、輸出は全般に弱く、輸入が西海岸港湾経由以外では強かった点である。
  • 輸入の減少はGDPにはプラスだが、データを見ると、西海岸港湾経由の減少分は、他経路への回送や、争議終結後の3月の上昇でかなり埋め合わされている。なお、西海岸港湾経由の輸入の多くは、日中およびアジア新興国というアジア経済からのもの。
  • 一方、輸出においてはそうした埋め合わせは起こらなかった。考えられる理由の一つは、輸入中間財が利用できなくなったことが一部の産業で生産を抑止し、ひいては輸出も抑えたというサプライチェーン問題である。
  • 西海岸港湾経由の輸出の低下が他の港湾並みという反実仮想シナリオを推計したところ、争議による第一四半期の実質輸出の伸び率の低下は1.5%という結果が得られた。実質GDP成長率へのマイナスの寄与としては0.2%ポイントに相当する。
    • 他の間接的な影響も様々に考えられるが(消費や投資支出への影響、輸出予定財が在庫に積み上がることによるGDP成長率へのプラスの効果、資本財や中間財の輸入の遅れによる製造業の生産や輸出への悪影響、輸出企業の生産や雇用の低下、ならびにサプライチェーンを通じた全般的な経済活動の低下)、それらは定量化は困難。