社会

異議の正当化

昨今の日本のSNSを騒がせているいわゆる「人文系」の騒動をはじめとしたネット上のいがみ合いについてタイムリーかつ示唆的ともいえる表題のNBER論文が上がっている(ungated版)。論文の原題は「Justifying Dissent」で、著者はLeonardo Bursztyn(シカゴ大…

逃げるはトラウマになるが役に立つ

「Forced Displacement and Human Capital: Evidence from Separated Siblings」というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクがある著者の一人のサイト)。著者はGiorgio Chiovelli(モンテビデオ大)、Stelios Michalopoulos(ブラウン大)、Elias P…

「我々と競争するならば結婚しない」(メアリー・ペイリーと)アルフレッド・マーシャル講演

というNBER論文が上がっている(H/T Mostly Economics)。原題は「“If you compete with us, we shan't marry you” The (Mary Paley and) Alfred Marshall Lecture」で、著者はRohini Pande(イェール大)、Helena Roy(スタンフォード大)。以下はその要旨…

人口動態の時空間の遷移

というNBER論文が上がっている。原題は「Demographic Transitions Across Time and Space」で、著者はfrom Matthew J. Delventhal(クレアモント・マッケナ大)、Jesús Fernández-Villaverde(ペンシルベニア大)、Nezih Guner(バルセロナ自治大)。 以下は…

強情な少女と依存的な少年:子供の時の行動に対する労働市場の報酬の性による違い

というNBER論文が上がっている。原題は「Headstrong Girls and Dependent Boys: Gender Differences in the Labor Market Returns to Child Behavior」で、著者はRobert Kaestner(シカゴ大)、Ofer Malamud(ノースウエスタン大)。以下はその要旨。 The au…

金融危機と政治的過激化:如何に破綻した銀行がヒトラーの権力への道を拓いたか

というBIS論文が上がっている(H/T Mostly Economics)。原題は「Financial crises and political radicalization: How failing banks paved Hitler's path to power」で、著者は Sebastian Doerr(BIS)、Stefan Gissler(FRB)、Jose-Luis Peydro(インペ…

イベルメクチン問題が教えてくれること

Scott Alexanderという有名ブロガー(cf. Slate Star Codex - Wikipedia)によるイベルメクチンのCovid-19への効果のメタ分析をタイラー・コーエンが推奨している。日本語記事では既にgigazineがその概要を紹介している。 そのブログでアレキサンダーは、イ…

共産主義の遺産から黒歴史へ:ルーマニアの場合

という論文(原題は「From a Communist Heritage to an Unwanted Past: The Case of Romania」)をMostly Economicsが紹介している。著者はRicardo ParraとJorge Ferraz(いずれもEstoril Higher Institute for Tourism and Hotel Studies)。以下はその要旨…

揺らぐ正当性:過去の中国における地震の紛争への影響

16日エントリで紹介した中国での日食と反乱の関係に似たテーマを扱った研究として、中国での地震と反乱の関係を扱った表題の論文が出されている(H/T 川口康平さんツイート)。原題は「Shaking Legitimacy: The Impact of Earthquakes on Conflict in Histor…

今も残るスペイン宗教裁判の傷跡

「As one sees shocking pictures from Afghanistan, here is a reminder from Spanish inquisition(アフガニスタンでのショッキングな映像が飛び込んできたが、この記事ではスペインの異端審問を呼び起こしている)」というコメントを添えてMostly Economi…

大都市は今後どうなるのか?

都市に関する論考をもう一丁。歴史家のハロルド・ジェームズが、表題のProject Syndicate論説(原題は「What Next for Great Cities?」)でメガシティについて考察している(H/T Mostly Economics)。彼が言うには、ロンドン、ニューヨーク、香港のような大…

AIの害

というNBER論文(原題は「Harms of AI」)をアセモグルが上げている(ungated版)。以下はその要旨。 This essay discusses several potential economic, political and social costs of the current path of AI technologies. I argue that if AI continues…

日食と革命の記憶:中国についての実証結果

というNBER論文が上がっている。原題は「Eclipses and the Memory of Revolutions: Evidence from China」で、著者はMeng Miao(中国人民大)、Jacopo Ponticelli(ノースウエスタン大)、Yi Shao(北京大)。 以下はその要旨。 Why are certain communities…

パンデミックは社会的地位の(低い人ではなく)高い人の間で最初に拡大する:COVID-19とスペイン風邪の実証結果

という論文にタイラー・コーエンがリンクしている。原題は「Pandemics Initially Spread Among People of Higher (Not Lower) Social Status: Evidence From COVID-19 and the Spanish Flu」で、著者はJana B. Berkessel(マンハイム大)、Tobias Ebert(同…

植民地の罠

というイアン・ブルマのProject Syndicate論説(原題は「The Colonial Trap」)をMostly Economicsが紹介している。以下は引用部の孫引き。 On February 20, 1947, Clement Attlee, the socialist British prime minister, informed parliament that India w…

自由と安全のフロンティア

9/4エントリで取り上げたアレックス・タバロックの豪州批判にタイラー・コーエンも参戦し、「自由と安全のフロンティア(liberty vs. safety frontier)」ないし「自由と生命のフロンティア(liberty vs. lives frontier)」に豪州は乗っていないのではない…

炎上後:1921年のタルサ人種虐殺の経済的影響

ウォッチメンのTVシリーズのテーマともなったタルサ人種虐殺(cf. タルサ人種虐殺 - Wikipedia*1)の経済的影響を取り上げた表題のNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「After the Burning: The Economic Effects of the 1921 Tulsa Race Massacre…

ワクチンの確保と接種の遅れが招いたこと

アレックス・タバロックが9/3付けMRブログエントリで、豪州のロックダウンは行き過ぎ、という主旨のアトランティック記事を紹介している(タイラー・コーエンもその少し前に「Has Australia gone too far?(豪州はやり過ぎたのか?)」というコメントを添え…

労働市場での従順さと社会的移動性:社会経済的アプローチ

アセモグルの今月のNBER論文をもう一丁。以下は、表題のNBER論文(原題は「Obedience in the Labor Market and Social Mobility: A Socio-Economic Approach」、ungated版)の要旨。 This paper presents an analysis of what types of values, especially i…

(成功した)民主主義は自らの支持を育む

というNBER論文をアセモグルらが上げている。原題は「(Successful) Democracies Breed Their Own Support」で、著者はDaron Acemoglu(MIT)、Nicolás Ajzenman(サンパウロ・スクール・オブ・エコノミクス)、Cevat Giray Aksoy(欧州復興開発銀行)、Marti…

ワクチンは銀の弾丸ではない?・その2

以前ここで取り上げたように、日本のコロナ検査体制が他国と比較して十分かどうかが一つの議論の的になっているが、事情は米国でも同様らしく、MRブログのアレックス・タバロックが、独英加に比べると米国の検査体制は不十分だ、と嘆いている。ただし、日本…

デルタ・シュトラウシアニズムの誘惑

アストラゼネカの開発責任者だったアンドリュー・ポラード・オックスフォード大学教授が集団免疫の可能性を否定した、というニュースが話題になったが、シドニー・モーニング・ヘラルド紙が「AstraZeneca lead scientist says Delta makes mass testing poin…

ソビエトの1932-33年の大飢饉の政治経済的な原因

一昨年に映画も製作された*1ホロドモールを取り上げた表題のNBER論文が上がっている(cf. 昨年9月時点のWP、タイラー・コーエンの紹介、Mostly Economicsの紹介)。論文の原題は「The Political-Economic Causes of the Soviet Great Famine, 1932–33」で、…

非近代化:権力・文化の軌道と政治制度の動学

というNBER論文でアセモグル=ロビンソンが、経済発展が民主主義につながるという近代化論(modernization theory)が何を見誤っていたか、について論じている(ungated版)。原題は「Non-Modernization: Power-Culture Trajectories and the Dynamics of Po…

誤情報:戦略的共有、類友、内生的なエコーチェンバー

というNBER論文をアセモグルらが上げている(ungated版)。原題は「Misinformation: Strategic Sharing, Homophily, and Endogenous Echo Chambers」で、著者はDaron Acemoglu、Asuman Ozdaglar、James Siderius(いずれもMIT)。 以下はその要旨。 We prese…

ワクチンは銀の弾丸ではない?

少し前に、コロナ禍対策でのワクチン頼みの是非や、ワクチン接種が進む中で改めて検査を拡充する必要性の有無が議論になったが、欧米ではその点の議論はどのようになっているのだろう、と少しぐぐってみたところ、幾つか記事が引っ掛かったので簡単に紹介し…

第二次世界大戦からコロナ禍までの危機のイノベーション政策

というNBER論文が上がっている。原題は「Crisis Innovation Policy from World War II to COVID-19」で、著者はDaniel P. Gross(デューク大)、Bhaven N. Sampat(コロンビア大)。 以下はその要旨。 Innovation policy can be a crucial component of gove…

技術革新が道を踏み外す時:技術退歩とオピオイド禍

エドワード・グレイザーの5月のNBER論文をもう一丁。以下はDavid M. Cutler、Edward L. Glaeser(いずれもハーバード大)による表題の論文(原題は「When Innovation Goes Wrong: Technological Regress and the Opioid Epidemic」)の要旨。 The fivefold …

ジェントリフィケーションと近隣の変貌:Yelpによる実証結果

エドワード・グレイザーの昨年末のNBER論文をもう一丁。以下はEdward L. Glaeser、Michael Luca、Erica Moszkowski(いずれもハーバード大)による表題の論文(ungated版、原題は「Gentrification and Neighborhood Change: Evidence from Yelp」)の要旨。 …

文化、制度、社会的均衡:ある枠組み

というNBER論文(原題は「Culture, Institutions and Social Equilibria: A Framework」)をアセモグル=ロビンソンが上げている(ungated版)。以下はその要旨。 This paper proposes a new framework for studying the interplay between culture and inst…