マスク強制の対価

というNBER論文が上がっている(H/T タイラー・コーエン)。原題は「Mask Mandate Costs」で、著者はPatrick Carlin(ワシントン州立大)、Shyam Raman(ウィリアムズ大)、Kosali I. Simon(インディアナ大)、Ryan Sullivan(海軍大学院)、Coady Wing(インディアナ大)。
以下はその要旨の概要。

  • 2022年初めに4000人を対象とした調査で、3か月間強制的なマスク着用を免除されるならば幾ら払うか、という質問に対し:
    • 56%は何も払わないと回答
    • 支払い平均額は525ドル
    • 0.9%は5000ドル以上払うと回答
    • 若い人ほど高い金額を払うと回答
  • この結果を統計的生命価値の標準的な指標と組み合わせると、少なくとも13,333人の生命が救われない限り3か月の強制的なマスク着用政策は正当化されない。

コーエンはこの研究結果について以下の3点を指摘している。

  1. 支払いを受けたいと思う額は、支払いたいと思う額を大きく上回ることが多い。マスク着用を拒否する権利があると思っている人の中には、着用しないために一銭も払う気はないが、着用するために百万ドルを払ってほしい、と考える者もいる。それほど極端でなくても、通常の実験室の状況で、支払いを受けたいと思う額は、支払いたいと思う額の5倍程度になる。
  2. 多くの人にとってマスク着用の価値は周囲の動向によって決まる。ある人は、自分がマスクを着用するにせよ、皆がマスクを着用するのをオーウェル的なディストピアと感じるかもしれないし、別の左がかった人は、自分の着用は義務を果たしているのであり、皆が着用することが良いことだと感じるかもしれない。
  3. 着用を強制する法が存在しないならば、民間部門の施設が顧客にどのように対応するかを見れば良いのではないか。彼らは顧客の要望の背後にある様々な要因を内部化する最も優れた感覚を持っているはずなので。もちろん、パンデミックのどの段階にあるかで答えは違ってくるだろうが。