をタイラー・コーエンが挙げている。以下はその概略。
- トランプとそのチームは今や我々がソーシャルメディアの世界に住んでいることを理解していた。民主党のエスタブリッシュメントでそれを理解している人は一部に限られた。
- 「トランプ主義」の右派は、少なくともここ5年は、進歩派の左派よりも知的に活発だった。議論を通じてクリエイティブになった。ただし、クリエイティブ=正しい、では必ずしもない。
- 米国の産業空洞化の影響は当初思われていたより大きく、かつ世論への影響は尾を引いた。
- トランプ主義とMAGAのメッセージは、近年においてはネガティブなムードほど広まりやすい、という法則*1に当てはまった。
- 黒人の地位向上で人気を博す、という賭けに民主党は出たが、結果はそれほど芳しくなかった。その理由は、レイシストや、自分のことで手一杯の移民、および、そもそものメッセージの不人気にあった。
- 社会のフェミニズム化の進展は、黒人やラテン系を含め、多くの男性を共和党側に追いやった。民主党は未婚女性の党になり過ぎた。
- オバマ政権は、知的階級によって統治される、という現実と感覚をもたらしたが、人々はそれを気に入らなかった。
- 民主党員や左派は実際のところ、平均すると、保守派ほど人として楽しい人たちではない。米国人は無意識にせよ、そのことに気づいた。
- 民主党員の徹底した平等主義のメッセージは、不人気で、かつ、そのメッセンジャーは、自分たちはお前たちよりも優れている、という雰囲気を纏っていた。米国人は無意識にせよ、そのことに気づいた。
- ウォーク(意識高い系)の戦略は大いに不人気だった。
- トランスジェンダーの支援は民主党員にとって最優先の課題では無かったが、放棄することもできなかった。
- 国境における移民の問題は手に負えなくなり、トランプは選挙活動の当初からそれを主要な問題として提起した。コーエン自身は移民に賛成の立場だが、それでもこう書かざるを得ない。移民懐疑派の意見は推して知るべし。
- 教育程度が高い人々は昔から民主党の牙城であり、今もそうだが、ここ数年でその権威と信認は地に落ちた。
- 巨大IT企業を標的にしたことは民主党の大いなる過ちだった。票よりも、むしろ資金と社会資本の代償が大きかった。トランプの2016年の勝利で巨大IT企業(とりわけフェイスブック)はスケープゴートとなったが、結果として民主党はむしろ自分たちエリートの基盤を切り崩した。
- アフガニスタン、ウクライナ、イスラエルの出来事は民主党の助けとならず、インフレは高騰し、実質借入金利は急上昇した。これらはバイデンのせいではないかもしれず、トランプならもっと上手くやれたわけでもないかもしれないが、とにかく実際に起きたことである。暗号資産は攻撃の的となり、コロナ禍は――特に長引いた学校閉鎖のせいで――民主党に不利に働いた。それ以外にも、「警察予算を打ち切れ」というスローガン*2や、左派で繰り返される反ユダヤ主義の台頭など、数多くの問題がある。
- 民主党は自分で自分の人気を落とすようなことをしており、かつ、そのことに向き合おうとしない。自らのメッセージが、それに向き合うことを難しくしている。何となれば、自分たちはより優れた人々のはずだからである。
- トランプは面白い。
- トランプは勝者のように振る舞う。米国人はそれが好きであり、暗殺未遂事件への彼の対応はそのことを改めて痛感させた。
- バイデンの最近の問題、および、バイデンと彼のチームは、少なくともトランプと同程度の詐欺を働いているのではないか、という認識。これは年齢と認知だけではなく、信頼の問題となっている。
このコーエンの指摘は、日本でも最近の都知事選の後にSNS上で浮き彫りになった分断をもたらした要因としてそのまま当てはまるものが少なからずあるように思われる。