最低賃金やEITCより賃金助成が望ましい?

最低賃金ネタをもう一つ。ノアピニオン氏が最低賃金やEITCより賃金助成が望ましい、と12/7エントリで主張している。氏の主張は概ね以下の通り。

  • 経済学的にはEITCが最低賃金より望ましい。
    • 失業の問題や、単に高校生の手取りを増やすだけに終わるという問題が、より少なくて済む。
  • しかし、一般の人々は最低賃金の方を好む。理由はおそらく以下の2つ*1
    • EITCは仕事への報酬では無いため、人々に稼いだという感覚を与えない。賃金は、たとえ政府によって市場価格より高く設定されたものだとしても、その感覚を与える。
    • EITCは手続きが面倒なため、資格のある人が申請しない。最低賃金の手続きは企業の問題。
  • では、EITCの経済的効率性と最低賃金の人気を併せ持つ政策は無いのか、というと、実は存在する。それが賃金助成で、従業員の賃金を引き上げる企業に補助金を与える、という政策。
  • EITCに比べた賃金助成の利点は以下の通り:
    • 自動的なものなので、貧困者が申請に手間とエネルギーを費やす必要は無い。
    • 労働者が稼ぐ賃金を引き上げる話なので、自尊心を高めることにつながる。
  • ただし、賃金助成でEITCを置き換えるならば、失業者のためにベーシックインカムなどの制度も同時に導入する必要がある。
  • 最低賃金に比べた賃金助成の利点は以下の通り:
    • 最低賃金より少し上の層を含め、すべてのワーキングプアを救うことが出来る。
    • 最低賃金は失業をもたらすが、賃金助成は雇用をもたらす。このことは、現状における以下の2つの問題を考えると特に重要。
      • 長期の経済停滞の最中にある。
      • ロボットの台頭。
  • ケビン・ドラムは、企業側が制度を悪用してわざと賃金を低く抑え、賃金助成で差を補填することを懸念しているが、所得に応じた賃金助成の逓減速度を十分に遅くすれば、その問題は回避できる。
  • デロングは、政府官僚による管理の問題を懸念しているが、社会保障や給与税減税において既にそうした管理は導入されている。
  • ケビン・ドラムは、富裕層に課税して賄う制度は政治的に実現不可能だろう、とも言う。また、クルーグマンは、最低賃金は広く知られており、支持者も多い、と言う。両者の指摘はおそらく当たっている。そのため、共和党を賃金助成支持に仕向ける必要がある。