ニューケインジアンの5つのテーゼ

をデロングが2000年の自論文から引く形で挙げ、その各々にクルーグマンが自ブログでコメントを付けているクルーグマンに言わせれば、60年代や70年代のケインジアンが同意しなかったこれらのテーゼは、ブランシャール、サマーズ、イエレンといった今の著名なケインジアンも同意しないだろう、とのことである。

  1. 名目ショックに対し価格調整が素早く即座に行われることを妨げる摩擦が、雇用と生産における景気循環変動の主たる原因である。
    • 価格粘着性はデータの解釈の際に必要。その一方で、トービンが好んで指摘した、価格が伸縮的だと不況を深刻化させる、という点も広く受け入れられている。
  2. 通常の状況下では、金融政策は財政政策よりも安定化ツールとして有効かつ有用である。
    • ゼロ金利下限ではそうではない。それはもはや抽象的ないし起きる可能性の乏しい世界ではなく、我々が5年間暮らしてきた世界である。財政政策の重要性を擁護していたトービンの正しさが立証された。
  3. 生産の景気循環変動については、それを(何らかの潜在生産からの低下ではなく)持続可能な長期トレンドの周りの変動として扱うことを出発点とするのが分析として最も良い。
    • この見方は自然率仮説ならびに垂直なフィリップス曲線という概念から来ている。しかし名目賃金の下方硬直性をはじめとする様々な理由によって、低インフレではフィリップス曲線は垂直でないという見解が広く受け入れられている。DalyとHobijnが説明するように、これもまた非常にトービン的な考えである。
  4. マクロ経済政策を分析する正しい方法は、政策ルールの経済にとっての含意を取り上げることであり、1年か2年のエピソードを個別に取り上げ、それぞれ独自かつ固有の政策対応が必要なものとして分析することではない。
    • 大恐慌規模のショックに直面した時にはそれは容易いことではない。
  5. 安定化政策への健全なアプローチはすべて安定化政策の限界を認識しなくてはならない。財政政策については長いラグと低い乗数であり、金融政策については長くて変動するラグと効果の規模の不確実性である。