サンダース経済分析騒動・余聞

サンダース候補の経済政策の効果についての分析で騒動を引き起こしたジェラルド・フリードマンがINETブログに記事を書きEconospeakのProGrowthLiberal(PGL)クルーグマンの反発を買っている*1

特に反発を買ったのが、ローマー夫妻も新しい古典派に取り込まれている、と述べた点で、それについてクルーグマンは以下のように書いている。

For those of us who participated in the austerity debates, that’s pretty amazing and disheartening. Remember when Robert Lucas accused Christy Romer of corruptly producing “schlock economics” to justify government spending? Remember the long fight against the doctrine of expansionary austerity and the mythical cliff at 90 percent debt? There was a huge division between Keynesians and anti-Keynesians, in which people like the Romers faced a torrent of abuse from the right. And there has also been a huge intellectual vindication, with interest rates, inflation, and output looking much more like Keynesian predictions than like what those on the right were predicting.
Oh, and on the issue where Lucas accused Romer of corruption: her estimate of a multiplier of 1.5 turns out to be very close to the numbers most researchers have found in the aftermath of the disastrous turn to austerity.
(拙訳)
緊縮財政の議論に参加した者にとって、これは極めて驚くべき、かつ、がっかりさせられる言葉である。ロバート・ルーカスが、クリスティーナ・ローマーは政府支出を正当化するために不道徳にも「くだらない経済学」を使った、と非難した時のことを覚えているだろうか?*2 あるいは、拡張的緊縮策と90%債務の架空の崖というドクトリンとの長い闘いのことは? ケインジアンと反ケインジアンの間には大いなる分断があり、ローマーのような人々は右派からの絶え間ない悪態に曝されてきた。そして、大いなる知的な立証もあった。金利、インフレ率、ならびに生産は、右派の人々が予測していたものより、ケインジアンの予測に遥かに近いものとなったのである。
それと、ルーカスがローマーを不道徳と非難した問題についてだが、彼女の1.5という乗数の推計値は、緊縮に転じるという惨事の後に多くの研究者が見い出した数字と極めて近いものだった。


このローマーの乗数の推計については、PGLも後続エントリで以下のように書いている

Mark Zandi was McCain’s economic adviser in 2008 who had the good sense to tell the Senator we had a Keynesian problem. Of course the Senator failed to listen to his own economic adviser. Lucas was criticizing Dr. Romer for using Zandi’s model. Now we see criticism from the left for her use of this same model. Go figure! But to be fair – his model is probably best tossed into the waste bin given what we know now. Did I say hindsight is 20/20?
(拙訳)
マーク・ザンディは2008年にはマケインの経済顧問で、賢明にも上院議員に、我々はケインズ的な問題を抱えている、と伝えた。そして上院議員は当然のごとく自分の経済顧問に耳を傾けなかった。ルーカスはローマー博士をザンディのモデルを使った咎で批判した*3。そして今や左派が、彼女のことをそのモデルを使った咎で批判している。いやはや何たることか! しかし公平を期すならば、我々が今知っていることに鑑みると、彼のモデルはゴミ箱に捨てられたものの中でおそらく最善のものだ。後知恵は洞察力に富む、と先に言ったよね?

*1:ノアピニオン氏のエントリも参照。

*2:ここでデロング経由で引用したルーカスの言葉の原文を参照。

*3:cf. 前注。ちなみにPGLはルーカスのこのローマー批判の問題点を指摘する際にクルーグマン2011年末のエントリを援用しているが、そこでクルーグマンリカードの等価性の話(cf. ここ)を持ち出している。