昨日や10/9のエントリで触れたModeled Behaviorのカール・スミスによる現在の経済学モデルの分類*1を、以下に簡単に紹介してみる。
- リアルビジネスサイクル理論
- 再計算理論
- ミスマッチ理論
- 労働者と仕事のミスマッチによって問題が起きるという考え。コチャラコタやStephen Williams*2がこのグループに属する。
- このグループにとっての不況とは、優先順位の大きな変動。再計算学派との違いは、必ずしもその変動が「誤り」によるとは限らない点。経済は変動するものだ、というのがその考え方の根底にある。
- ある者は、不況は長期の趨勢の変曲点に過ぎない、と言う。またある者は、住宅バブルについても誤りとは見做さず、ただ単に優先順位が変わっただけだ、と言う。
- 参考文献(難易度高)。
- ニューケインジアン
- 上記以外は基本的にニューケインジアン。この学派はマンキューのメニューコスト理論に端を発する*3。
- このグループにとっての不況とは、何らかの金融資産への超過需要。その何らかの金融商品とは何かというと、ある者はそれは債券だと言い、別のある者は貨幣だと言い、また別のある者は信頼性の高い金融資産だと言う*4。
- この学派における中心的な課題:なぜ、言ってみれば単なる紙切れに過ぎない金融商品の交換が、これほど大きな影響を実体経済に与えるのか? そうなるためには、実体経済と金融経済の接点が、何らかの形で硬直的でなくてはならない。一般には、マンキューが初めてその一貫した理由(の一つ)を提供したと言われている。
- 大部分の経済学者は何らかのニューケインジアンモデルで考えている。違いが生じるのは、細部に亘る点や、どこに焦点を当てるかという点。政策に話が及ぶ時は、論者の政治経済的な立場がモノを言う。
- (スミスは)個人的には財政政策に懐疑的で、金融政策ないしFRBに焦点を当てるべきと考えている。財政政策をやるにしても、減税や低所得者補助に限るべき、と考えている。しかしこの立場は、モデルから導き出された訳ではなく、政治経済的な理由による。実際、オバマ支出策によってGDPが高くなるか低くなるかと訊かれたら、高くなる、と答える。
- 一方で、デロングやクルーグマンのように財政政策を選好する者もいる*5。
- 参考文献:バローのケインジアン批判、マンキューによるケインジアンの基本命題の擁護
これに対しクルーグマンは10/6ブログエントリ(の前半部*6)で、スミスの分類に大きな異論は無いとしつつも、自分ならば非ニューケインジアンは供給側に問題を見い出すということで一緒くたにしてしまう、としている*7。
クルーグマンに言わせれば、ミスマッチ理論は、リアルビジネスサイクル理論で実物ショックが特定の形を取った場合の派生モデルに過ぎず、再計算理論は、ミスマッチ理論のそのまた派生に過ぎない、とのこと。また、いずれの理論も現実の金利とインフレ率の推移により否定された、とばっさりと斬り捨てている。