Stephen Williamsonの11/27エントリを巡ってエコノブロゴスフィアが一騒動になっている(Rowe、デロング、クルーグマン[ここ、ここ*1]による批判、それに対するノアピニオン氏、Andolfattoによる逆批判、AndolfattoへのRoweの反論、Williamson自身の再論*2)。ただ、浅学を省みずにそれらの議論であまり指摘されていないように思われる点を敢えて指摘すると、Williamsonの元エントリの以下の式の解釈に問題があるように小生には思われる。
(6) p(t+1)/p(t) = B/(1-L)
ここでpは価格、Bはディスカウント・ファクター、Lは流動性プレミアムである。Williamsonはこの式から、流動性プレミアムが上昇するとインフレが高まる、としている。そして、量的緩和は、流動性プレミアムを下げることにより、目論見とは逆にインフレを低下させて実質金利を上げてしまう、と主張している。
だが、ケインズの流動性選好仮説からすれば、流動性プレミアムが高まれば貨幣ないし安全資産への志向が高まり、それらの価値が高まるはずである。即ち、デフレになるはずである。では、なぜWilliamsonの議論では逆の結果になっているのであろうか?
Williamsonは(6)式でLが高まるとp(t+1)が高まりインフレになる、と考えているようである。しかし、p(t+1)を長期均衡と考えれば、Lが高まるとp(t)が低下すると考えられる。即ち、クルーグマンの2期間モデルと同様、インフレ期待を作り出すために現在の価格が下がること(=デフレ)が生じるものと考えられる。Williamsonはその点を見落としているように思われる。
*1:ちなみにここでのクルーグマンの議論は、本ブログのこのエントリなどで取り上げた話である。[2013/12/4追記]MBK48さんがクルーグマンの前者のエントリを邦訳されている。
*2:[2013/12/4追記]Williamsonのノアピニオン氏への反論、タイラー・コーエンのリンクがてらのノアピニオン氏支持のコメント、クルーグマンの再論、そのクルーグマンへのWilliamsonの反応、デロングによるクルーグマン支持、サムナーによるRowe支持、Williamsonの推論を否定したベックワースによる簡単な実証、Roweの再論。