マンキュー対オバマ大統領

マンキューブログからネタをもう一丁。かつてのクルーグマンのブッシュ批判を真似たわけでもなかろうが、最近マンキューはオバマの“食言”批判を強めている。


12/5エントリでマンキューは、前日のスピーチオバマが「最低賃金の引き上げが職を犠牲にするという確たる証拠(solid evidence)は無い」と述べた点を槍玉に挙げ*1、「完全な決定的証拠(completely decisive evidence)は無い」、もしくはより正確には「証拠は入り混じっている(mixed evidence)」と述べるべきだった、と批判している。このエントリをマンキューは「The CEA Fact Checkers Miss One」としており、この問題をCEAのチェックの甘さに帰している。


また、10/29エントリでは、医療保険改革を経ても各人が現在加入している保険を維持できる、とオバマが繰り返し述べたことが事実に反していた点を槍玉に挙げ、以下のように書いている。

As someone who has previously worked for a President, I am fascinated by how the White House staff let President Obama so consistently and so publicly make a false statement. Presidential speeches undergo a painstakingly thorough review process. It seems that there are only three possibilities:

1. The White House staff did not know the statement was false. That is, they did not understand the law the administration was promoting.

2. The White House staff knew the statement was false, but they decided to keep this fact from the President. That is, they let the President unwittingly lie to the American people.

3. The White House staff knew the statement was false and told the President so, but the President decided to keep saying it anyway. That is, the President consciously decided to lie to the American people.

These are the only three possibilities I can envision. None of them reflects particularly well on what has been going on in the White House.
(拙訳)
かつて大統領の下で働いていた者として、オバマ大統領が一貫して公けに誤った声明を述べることをホワイトハウス職員がどうして許したか、という点に大いに興味を惹かれる。大統領のスピーチは徹底したレビュープロセスを経ている。可能性としては、3つしか考えられない:

  1. ホワイトハウス職員は声明が誤りだとは知らなかった。即ち、政権が推進している法律を理解していなかった。
  2. ホワイトハウス職員は声明が誤りだと知っていたが、大統領にその事実を伝えないことを決断した。即ち彼らは、大統領がそうとは知らずに米国民に嘘を付くことを許した。
  3. ホワイトハウス職員は声明が誤りだと知っており、大統領にその旨伝えたが、大統領がとにかくそう述べることを決断した。即ち、大統領は故意に米国民に嘘を付くことを決断した。

僕が考え付く可能性はこの3つだけだ。いずれの可能性も、ホワイトハウスで起きていたことについて特に良いことを示しているとは言い難い。

マンキューはこのエントリのタイトルを「Who knew what when?」と題しているが、これはウォーターゲートスキャンダルでハワード・ベーカーが発した「What did the President know and when did he know it?」という有名な言葉をもじったものだろう。


さらに、翌10/30エントリではフェルドシュタインのオバマケア批判Project Syndicate記事に「Marty worries about a great unraveling.」というコメントを添えてリンクしているが*2、このコメントはもちろんクルーグマンの以下の著書のタイトルを意識したものだろう。

The Great Unraveling: Losing Our Way in the New Century (English Edition)

The Great Unraveling: Losing Our Way in the New Century (English Edition)

ちなみにこの本の邦題は「嘘つき大統領のデタラメ経済」である。

*1:この点についてのマンキューの見解は本ブログの5日および7日エントリでリンクした12/3エントリも参照。

*2:最近のマンキューのオバマケア批判記事へのリンクエントリとしては、その他、本ブログの昨日エントリで紹介した11/25エントリ、および、10/12エントリで紹介した10/9エントリがある。