長期における格差と資本主義

昨日Piketty=Saezの資本課税の論文を紹介したが、著者の一人であるPikettyが、来年3月に出版される自著「Capital in the Twenty-First Century*1の紹介という形で資本と格差についてヘルシンキで講演したという。タイラー・コーエンがその近刊はとても重要、とMRブログでアマゾンにリンクしたほか、FT AlphavilleでCardiff Garciaがヘルシンキ講演のpdf「Inequality & Capitalism in the Long-Run」にリンクし、それをデロングが取り上げている


デロングは、Pikettyヘルシンキ講演の要点として以下の6つを挙げている。

  1. 旧世界(欧州と日本)で成長率が低下するにつれ、我々はまたもや資本優位の状況を目にしている。物理的資産やそれ以外の人間の技術に関係しない資産が社会全体の富に占める割合が増大している。相続や地位が重要度を増し、個人の努力や運があまり重要では無くなってきている。
     
  2. 実際、資本の平均リターンが相対的に高く、成長率との大きな差が生じている時には、富の集中は、かつてのピークと同水準、ないしそれを超える可能性が高い。その時の最富裕層は、最初から裕福で、複利と幸運の恩恵を受けている。
     
  3. 米国は例外的な謎として残る。ただ、旧世界よりももっと極端な富の分布に向かおうとしているように見える。
     
  4. 所得と富の分布の変化は、常に政治的で、混沌としており、予測不可能であり、国固有のものである――世界市場の状況ではなく国家特有の要因が富の分布を決める。
     
  5. 高水準の資産格差は「市場の失敗」によるものではない。むしろそれは市場の成功である。資本市場で摩擦がもっと減り、歪みも無くなれば、富の格差は大きくなる。
     
  6. 理想的な解決策は何か? 累進的な全世界的な資産税である。

*1:ただしケビン・ドラムが指摘するように、原語版(=仏語版)の「Le capital au XXIème siècle」は3ヶ月前に出版済み。