をブルームバーグが各経済学者に取材した結果を正月付け記事として上げている(H/T Mostly Economics)。
以下はその一覧。
- Janet Currie, professor of economics and public affairs at Princeton University:
- 米国の乳児死亡率の低下
- CDCによると2005年から2011年に12%低下した。格差が拡大し失業率が急上昇した中で驚くべきこと。
- 理由の一つはセーフティネット:
- メディケアが全体の出産費用の40%を負担している。ほぼすべての出産が公的もしくは民間の保険によって賄われているため、すべての乳幼児が救命技術にアクセスできる。
- WIC。
- 看護婦の家庭訪問プログラム。
- その他、公害の減少も寄与。
- Susan Athey, professor of economics at Stanford University:
- Simon Johnson(サイモン・ジョンソン), professor of entrepreneurship at MIT’s Sloan School of Management:
- David Autor, David Dorn and Gordon Hanson によるAER論文
- 1990年から2007年に掛けての中国からの輸入の増加は、同時期の製造業の仕事の減少のうちおよそ1/4の原因となった。
- 過去30年の労働市場の二極化の主因は技術進歩だったが、加工品を輸出する低所得国との貿易の増大も良い方向には働かず、中国の勃興は確実に米国内の格差拡大に寄与した。
- Douglas Holtz-Eakin(ダグラス・ホルツイーキン), president of the American Action Forum and former director of the Congressional Budget Office:
- GDPの回復の遅さ
- 2013年の経済の出来事については様々な候補があるが(FRBの量的緩和縮小への躊躇い、富裕層への増税、オバマケアを巡るドタバタ、規制拡大、エネルギー部門の台頭がもたらした新たな機会、連邦財政問題)、いずれも経済回復が思わしくないことに話がつながっている。
- 規制、財政問題、増税、オバマケアは回復が遅い原因であり、エネルギーや住宅部門の回復は悪い中での曙光であり、FRBの政策は弱い回復への対応である。
- James K. Galbraith(ジェームズ・ガルブレイス), professor at the LBJ School of Public Affairs at the University of Texas at Austin:
- Thomas Herndonによるラインハート=ロゴフ論文の誤り指摘
- それを嚆矢として、緊縮財政や財政赤字への懸念や社会保障支出削減を正当化する理由は次から次へと崩れ、年末には財政赤字への懸念は影を潜めた。
- 外部環境(医療費の膨張が止まったこと、長期金利の上昇が財政赤字ではなくFRBの緩和縮小を巡る話題によるものだったこと、財政赤字が予想より急速に縮小したこと)もこの傾向に寄与。
- 経済格差が再び課題として浮上し、次の大きなテーマは最低賃金引き上げとなっている。社会保障も無事存続し、一部では削減ではなく拡大の話さえ出ている。
- ただ、まだ油断は禁物。しかも欧州ではドイツの新政権体制に見られるように緊縮財政が主流となっている。今後の行方に要注目。
- Dani Rodrik(ダニ・ロドリック), professor of social science at the Institute for Advanced Study in Princeton, New Jersey:
- 新興国の高成長の終焉
- 成長率の鈍化もあるが、主因はFRBの緩和縮小の話が出たことだった。インドからブラジルに至るまで通貨が下落したことにより、それらの国の近年の成長は外部環境――特に、米国の低金利と商品価格の上昇――のお蔭であることが明らかになった。
- 中国については、持続不可能な投資比率がソフトランディングするかハードランディングするかの意見の違いはあるが、成長率が低下することに疑問を差し挟む者はいない。
- 発展途上国ではガバナンスが改善し、マクロ経済政策も向上したが、先進国と同様、構造問題に苦しんでいる。
- 近年の成長の恩恵を受けたのが一部の人間に限られていること
- 工業化と多様化という従来の成長エンジンが不調気味であること
- 金融のグローバル化が国内投資の財源というよりは不安定化の源になっていること
- 新興国では抗議活動も活発化した。政府が期待を持たせ過ぎた都会の若者や中流階級の不満は今後も課題となる。
- June O’Neill, director of the Center for the Study of Business and Government at Baruch College, former director of the Congressional Budget Office:
- 米国の医療費支出がGDPの18%に達したこと
- 主要費用の伸びは過去数年間に鈍化したが、それは景気後退と、州や他の支出に負担を皺寄せしたお蔭。
- オバマケアの影響は未知数とは言え、連邦政府の負担増につながりそう。
- Laura Tyson(ローラ・タイソン), professor at Haas School of Business at the University of California, Berkeley, and former chairman of the National Economic Council:
- Glenn Hubbard(グレン・ハバード), dean of Columbia University Graduate School of Business and former chairman of the Council of Economic Advisers:
- 金融システムの脆弱性の継続
- 金融危機への対処の過程で、金融政策(最後の貸し手)と財政政策(銀行の資本増強)が重要であることを我々は学んだが、規制改革はまだ不十分:
- 吠えなかった犬に轡(大手行の自己勘定取引禁止)
- 吠えた犬は事実上野放し(政府系金融機関)
- 逆効果をもたらす規制を推進(システム上重要な金融機関の指定、銀行の自己資本比率の引き上げ)
- 2014には2つの大きな課題:
- 大手行をどうするか?
- 現在の対処法は症状より性質が悪い。潰すには大きすぎる銀行を減らすのは結構だが、大手行を単に分割するのは金融システムにおけるリスク相関の問題を減らしはしない。公益事業として銀行を規制するのは、金融のイノベーションを鈍化させる怖れがある。
- 次の危機に備えてどこまで銀行に自己資本を積み増しさせるべきか?
- 自己資本規制の強化には融資減少と影の銀行へのシフトという副作用がある。