私がオックスフォードで学んだこと

と題してクリス・ディローが、およそ30年前に学んだことで今も有用だと考える点として以下の6項目を挙げている

  1. 経済学はメカニズムの研究であり、モデルの研究ではない。問題は、どういったメカニズムでXがYに影響するかだ。それは時と場所によって異なる。従って、課題とすべきは、(単に)モデルを解くことではなく、どれが我々の現状に最も関係しているのか、と問うことなのだ。
     
  2. 経済理論には歴史があり、それを勉強するのは有益なことだ。その中には、現代経済学が解くことなく放置した問題がある。
     
  3. 経済学は単独で研究することはできない。経済学について真剣に考えると、いずれは必ず政治的な問題にぶち当たる。それは権力の本質という問題だったり、合理性の本質といった哲学的ないし心理学的な問題だったりする。
     
  4. 読者を退屈させてはいけない。「最初の優れた一文で私の興味を掻き立てろ」とブライアン・ハリソン*1は生徒に言ったものだ。個人指導方式の一つの良い点は、指導者の注意が逸れ始めた時に彼がそれを教えてくれることだ。ということは、知っていることをすべて書く必要はない、ということだ。簡潔さは美徳なり(フランシスビル、君たちに言っているんだよ)。
     
  5. 原著を読め。例えばデビッド・リカードが何を考えていたかを知りたければ、二次的資料ではなく彼の書いた本を読むべきだ。たとえそれが大いなる苦痛を伴うとしても、だ。このことは、講演やデータについて報道記事に頼ってはいけない、ということも意味する。
     
  6. 知力がすべて、というわけではない。私の同世代ないしその前後の世代で世間的に最も成功したのは、(狭義の意味で)最も賢かった人ではなく、最も立派な人だった――彼らが代表的なサンプルだと言うつもりは無いがね。トップになりたければ、精力的に試験勉強に取り組むのに必要な自己規律の方が、IQそのものより重要だ。

*1:この人のことか。