アセモグル=ロビンソンと地理的条件:サックスの反論

昨日紹介したサックスのアセモグル=ロビンソンへの反論記事から、アセモグル=ロビンソンが地理的条件の無効性を論ったことへの反論部分を以下にまとめてみる(各箇条書きの主項がアセモグル=ロビンソンの主張、副項がサックスの反論)。

  • 地理的条件は、米国のノガレスとメキシコのノガレス、北朝鮮と韓国、東独と西独の違いを説明できない。
    • 地理的条件ではそれらの違いを説明できず、政治的要因で説明できるからと言って、地理的条件は無効、というのは誤った推論。
  • 1492年以前はアメリカ大陸の熱帯域は温帯域よりも裕福だったので、熱帯域の貧困は自明でもなければ事実でもない。また、欧州の人々がやってきて両地域の貧富の関係が完全に逆転したことは、植民地化と関係しており、地理的条件とは何の関係も無い。
    • その主張は、今日の富裕なペルシャ湾岸国は150年前は漁村だったが、原油はずっとそこにあったので、貧富の逆転は政治的要因による、と言うようなもの。150年前は油田は発見されておらず、石油を使う内燃機関も発明されていなかった。北米について言えば、過去2世紀において豊富な天然資源が工業化において主要な役割を担ったことをアセモグル=ロビンソンは無視している。それらを扱う技術は1491年には存在しなかった。新世界の大きな経済力は、地理的条件と技術の進展の相互作用から生まれた。
  • 熱帯病はアフリカに苦難と高い乳幼児死亡率をもたらしているにしても、アフリカの貧困の原因では無い。疾病は大きくは貧困の結果であり、政府が対策を取れない、もしくは取ろうとしない結果である。
    • 場所によって病気の深刻度が違うのは疫学の基本。例えばマラリアの伝染力は環境によって異なり、アフリカで対処するのは世界の他のどの地域よりも難しい。また、マラリアはアフリカの貧困の結果というだけではなく原因、という実証結果も出ている。
  • 富裕国に近接した町が発展しやすい、と言うのは、国家間もしくは地域間の所得の違いにおける地理的要因を重視する地理仮説とは別物。
    • これは誤り。アダム・スミス以来、町だろうが国だろうが市場との近さがその場所の生産性を定める、というのは地理仮説の一部。米国との国境に接するメキシコのノガレスが主要な工業都市となっていることは、内陸国が沿岸国より貧しい傾向がある、というのと同じ地理的原理に基づいている。